荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~STORY #039

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2024.03.13

一般

お酒と北前船の奥深いつながりの物語

お酒と北前船の奥深いつながりの物語

北前船は、江戸時代中期から主に明治時代にかけて、北海道(蝦夷地)と本州各地を往来し、全国各地の産物を取引したことで、現在に至るまで食文化をはじめ人々の暮らしに大きな影響を与えています。
その一つがお酒です。

お酒は、北前船の積荷として各地に運ばれていただけでなく、北前船主が自ら酒造業を経営し、醸造から販売まで手がけている場合もあります。
そのいくつかは、現在も人気酒蔵として営業を続けています。

北海道では、鉄道が開通するまで生活物資のほぼ全てが北前船によってもたらされていました。
4月頃、関西方面や北陸・東北から、米や味噌、そしてお酒を満載した北前船が港へやってくると、「青箍」(あおたが)が来たと大喜びして出迎えにいきました。
青箍はお酒を入れた酒樽のことで、北前船の積荷の象徴でした。
当時の人々にとって北前船はお酒を持ってきてくれる大切な「宝船」だったのです。

全国各地の北前船寄港地に北前船と関わりが深い酒蔵がありますが、ここでは、いまも営業を続けている老舗を紹介します。

東北の北前船寄港地の酒蔵

青森県鯵ヶ沢町にある尾崎酒造は、屋号を若狭屋とし、初代の五郎右衛門は、正保〜慶安年間(1644-1652)頃、若狹国から移住してきた船乗りでした。
海産物の仲買商などを営んだ後、万延元年(1860)から現在まで続く酒造業を始めました。
酒蔵の天井がとても低いのですが、これは元々、北前船で運んだ海産物の倉庫として建てられた蔵を活用しているためです。
白神山地の湧き水を仕込水として、丁寧に醸造されるお酒はいまも多くの人に愛されています。

秋田県由利本荘市の齋彌酒造店は、藩政時代、亀田藩の物流拠点として栄えた石脇地区にある酒造店です。
明治35(1902)年に初代齋藤彌太郎によって創業され、醸造されたお酒は石脇港から北前船で各地に運ばれました。
建物11棟は国の登録有形文化財に登録されています。
雪の茅舎など人気銘柄で知られ、令和元(2019)年には、ショップ・カフェ・ギャラリーを備えた「発酵小路田屋」がオープンし、観光客の立ち寄りスポットにもなっています。

齋彌酒造店(秋田県由利本荘市) 齋彌酒造店(秋田県由利本荘市)

雪の茅舎(齋彌酒造店) 雪の茅舎(齋彌酒造店)

秋田県南部の鳥海山のふもとに拡がるにかほ市の北前船寄港地、平沢港近くの飛良泉本舗は、かつて北前船で運ばれた物資を取引する回船問屋で、酒造は副業でした。
創業は室町時代に遡ると伝わり、屋号の「泉屋」が示すとおり、創業者の齋藤家は関西の泉州(現・大阪府泉佐野市)から、仁賀保へと移り住みました。
「飛良泉」は、名僧・良寛の友人が手紙に書いた「飛び切り良い、白い水」という言葉に由来します。
空気中の乳酸菌など微生物の力を利用し、自然のままに酒母を培養・育成する山廃仕込みにより、ふくらみある味わいと、快い酸味、飲みあきない腰の強さが特徴です。

飛良泉本舗(秋田県にかほ市) 飛良泉本舗(秋田県にかほ市)

飛良泉本舗のお酒(飛良泉本舗) 飛良泉本舗のお酒(飛良泉本舗)

近畿の北前船寄港地の酒蔵

兵庫県赤穂市の北前船寄港地・坂越の奥藤酒造は、回船業などで財を成した奥藤家が慶長6(1601)年に創業、藩主の浅野家御用達もつとめた歴史ある酒蔵です。
酒蔵がある坂越本通りは、旧坂越港への道筋で、北前船をはじめ様々な回船で各地に運ばれました。
原料は日本名水百選に選ばれた千種川の清流と播州米。
しっかりとした味わいで後切れのいい、もう一杯と進むお酒を理想に、現在も酒造りを営んでいます。
敷地内の、奥藤酒造郷土館には、酒造道具や北前船の模型や資料など、奥藤家と坂越の栄華をいまに伝える様々な資料が展示されています。
1階の寄合蔵では聞き酒会などが開催され、文化発信の場として活用されています。

奥藤郷土資料館 奥藤郷土資料館

銘酒「忠臣蔵」(奥藤酒造) 銘酒「忠臣蔵」(奥藤酒造)

各地の酒徳利(奥藤酒造郷土館) 各地の酒徳利(奥藤酒造郷土館)

北前船とお酒のつながりの奥深いストーリーを知ると、さらにお酒の楽しみが深まります。
ぜひ、各地の北前船ゆかりの酒蔵を訪問してみてください。

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