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STORY #056

山寺が支えた紅花文化

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STORY

鬱蒼と茂る木々に囲まれた参道石段と奇岩怪石の景勝地「山寺」。
この山寺から始まった紅花栽培と紅花交易は
莫大な富と豊かな文化をこの地にもたらした。
石積の板黒塀と堀に囲まれた広大な敷地を持つ
豪農・豪商屋敷には白壁の蔵座敷が立ち並び、
上方文化とのつながりを示す雅な雛人形や、
紅花染めお衣装を身につけて舞う舞楽が今なお受け継がれ、
華やかな彩りを添える。
この地の隆盛を支えた山寺を訪れ、
今も息づく紅花畑そして紅花豪農・豪商の蔵座敷を通して、
芭蕉も目にした当時の隆盛を偲ぶことができる。

詳細を表示 構成文化財一覧 詳細 [PDF 21M]

構成文化財一覧

  • 文化財の名称

    指定等の状況

    文化財の所在地
  • 紅花畑の景観

    未指定

    山形市、天童市、中山町、河北町
  • 山寺

    国名勝史跡

  • 立石寺中堂

    国重文(建造物)

  • 若松寺観音堂

    国重文(建造物)

  • 最上川

    未指定

    寒河江市、天童市、尾花沢市、中山町、河北町
  • 紅餅の製作技術

    未指定

    山形市、天童市、中山町、河北町
  • 紅花屏風

    県指定(絵画)

  • 花笠まつり

    未指定

    山形市、天童市、尾花沢市
  • 紅花まつり

    未指定

    山形市、天童市、中山町、河北町
  • 紅花染め衣装(亀綾織絹地鶴亀ニ松竹梅福寿模様藍ニ墨ト紅曙染女中裁祝着)

    町指定(有形民俗)

  • 紅花染め衣装(揚柳上布地籬ニ春花模様藍墨ト紅ノ曙染単大振袖)

    町指定(有形民俗)

  • 紅花染め衣装(元禄紅花染小袖)

    町指定(工芸品)

  • 紅花染め衣装(縮緬紅花染振袖A)

    町指定(工芸品)

  • 紅花染め衣装(縮緬紅花染振袖B)

    町指定(工芸品)

  • 芭蕉の句碑

    未指定

  • 紅の蔵及び収蔵資料(旧長谷川家)

    未指定

  • 芭蕉、清風歴史資料館(旧丸屋鈴木家住宅)

    未指定

  • 紅花資料館及び収蔵資料(旧堀米家)

    町指定(建造物)

  • 旧安部家住宅と屋敷及び収蔵資料

    町指定(建造物)

  • 旧柏倉家住宅及び収蔵資料

    町指定(建造物)

  • ふるさと資料館及び収蔵資料(旧佐藤家)

    未指定

  • 次郎左衛門置上げ立雛

    町指定(工芸品)

    河北町
  • 享保内裏雛

    町指定(工芸品)

  • 御所人形

    町指定(工芸品)

    河北町
  • からくり人形

    町指定(工芸品)

    河北町
  • ひな市(ひなまつり)

    未指定

    山形市、寒河江市、天童市、尾花沢市、山辺町、中山町、河北町
  • 林家舞楽

    国無形民俗

  • 尾花沢雅楽

    市指定(無形)

  • 尾花沢まつり囃子

    市指定(無形)

  • 谷地八幡宮

    未指定

  • 慈恩寺旧境内

    国史跡

  • 木造弥勒菩薩及び諸尊像 附 弥勒菩薩像像内納入品

    国重文(彫刻)

  • 慈恩寺本堂

    国重文(建造物)

  • 芋煮

    未指定

    山形市、寒河江市、天童市、尾花沢市、山辺町、中山町、河北町
  • おみづけ(近江漬け)

    未指定

    山形市、寒河江市、天童市、尾花沢市、山辺町、中山町、河北町

LOCATION

山形県(山形市, 寒河江市, 天童市, 尾花沢市, 山辺町, 中山町, 河北町)

ACCESS

山形市
  • 鉄道
    • JR東京駅(山形新幹線)~JR山形駅(約2時間30分)
    • JR仙台駅(仙山線)~JR山形駅(約70分)
    • 東京都内~浦和本線(東北自動車道)~村田JCT~山形蔵王IC(約4時間20分)
    • 東京都内~浦和本線(東北自動車道)~福島JCT~南陽高畠IC~山形(約4時間15分)
    • 仙台宮城~山形北IC(約40分)
  • 飛行機
    • 羽田空港~おいしい山形空港(山形空港シャトル 約30分)~山形市内
  • 高速バス
    • 東京~山形(約5時間30分)
    • 仙台~山形(約70分)
寒河江市
  • 鉄道
    • JR東京駅(山形新幹線)~JR山形駅(左沢線)~JR寒河江駅 (約3時間)
    • 東京都内(東北自動車道)~村田JCT(山形自動車道)~寒河江IC約(4時間40分)
  • 飛行機
    • 羽田空港~おいしい山形空港(タクシー 約20分)~寒河江
  • 高速バス
    • 東京都内~寒河江(約7時間)
天童市
  • 鉄道
    • JR東京駅(山形新幹線)~JR天童駅 (約2時間40分)
    • 東京都内(東北自動車道)~村田JCT(山形自動車道)~山形IC(約4時間40分)
  • 飛行機
    • 羽田空港~おいしい山形空港(山形空港ライナー)~天童市内(1時間10分)
  • 高速バス
    • 浜松町バスターミナル~天童市内(約6時間50分)
尾花沢市
  • 鉄道
    • JR東京駅(山形新幹線)~JR大石田駅 (バス・タクシー)~尾花沢市内(約3時間)
    • JR仙台駅(仙山線)~JR山形駅~JR大石田駅(バス・タクシー)~尾花沢市内(約2時間)
    • 東京都内(東北自動車道)~村田JCT(山形自動車道)~山形JCT(東北中央自動車道)~東根IC(国道13号)~尾花沢市内(約6時間)
  • 飛行機
    • 羽田空港~おいしい山形空港(山形空港ライナー)~尾花沢市内
    • 伊丹空港~おいしい山形空港(山形空港ライナー)~尾花沢市内
    • 小牧空港~おいしい山形空港(山形空港ライナー)~尾花沢市内
    • 新千歳空港~おいしい山形空港(山形空港ライナー)~尾花沢市内
山辺町
  • 鉄道
    • JR東京駅(山形新幹線)~JR山形駅(左沢線)~JR羽前山辺駅(約2時間40分)
    • 東京都内(東北自動車道)~村田JCT(山形自動車道)~山形JCT(東北中央自動車道)~山形中央IC~山辺町内(約4時間20分)
  • 路線バス
    • 山形駅(山交バス)~山辺町(約25分)
中山町
  • 鉄道
    • JR東京駅(山形新幹線)~JR山形駅(左沢線)~JR羽前長崎駅(約2時間50分)
    • 東京都内(東北自動車道)~村田JCT(山形自動車道)~寒河江IC~中山町内(約4時間15分)
  • 飛行機
    • 羽田空港~おいしい山形空港(タクシー)~中山町
河北町
  • 鉄道
    • JR東京駅(山形新幹線)~JRさくらんぼ東根駅(タクシー)~河北町紅花資料館(約3時間30分)
    • 東京都内(東北自動車道)~村田JCT(山形自動車道)~山形JCT(東北中央自動車道)~東根IC~河北町紅花資料館(約6時間)
  • 飛行機
    • 羽田空港~おいしい山形空港(タクシー)~河北町紅花資料館

CONTACT

  • 山形県教育庁 文化財・生涯学習課
  • TEL:023-630-3341
  • 山形市教育委員会 社会教育青少年課
  • TEL:023-641-1212(内線626)
  • 寒河江市教育委員会 生涯学習課
  • TEL:0237-86-8231
  • 天童市教育委員会生涯学習課
  • TEL:023-654-1111(内線833)
  • 尾花沢市教育委員会社会教育課
  • TEL:0237-22-1111(内線321)
  • 山辺町教育委員会事務局教育課社会教育係
  • TEL:023-667-1115
  • 中山町教育委員会教育課生涯学習グループ
  • TEL:023-662-2235
  • 河北町教育委員会 生涯学習課
  • TEL:0237-71-1111

STORY

山寺が支えた紅花文化

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花笠まつり

山形県の中央部に位置する村山地域は、江戸時代には日本一の紅花の産地として知られました。紅花は上方に運ばれて華麗な西陣織や化粧用の紅に加工されて日本人の暮らしを彩りました。ここでは紅花交易を通してもたらされた豊かな富と華やかな上方文化が今も息づいています。その発展の背景には当地を代表する古刹「山寺」が深くかかわっていました。

山寺が支えた紅花交易の発展

山寺(宝珠山立石寺)は、慈覚大師円仁が平安時代に清和天皇の勅命を受けて建立したと伝わる天台宗の寺です。長い年月を経て侵食された奇岩怪石が覆う山肌や、籍屠と茂る木々に囲まれた千数百段の石段など、自然景観と諸寺、そして門前町が一体となって山寺を構成しています。本堂には、比叡山延暦寺から分火された「不滅の法灯」が千年以上も絶えることなく燃え続け、この地を見守り続けています。

紅花は慈覚大師や第二世安然大師によってこの地に伝えられたと言わほしぬのれています。山寺の門前町、慈覚大師の随行六人衆が起こした旧干布村(天童市干布地区)は立石寺の寺領とされ、江戸時代の早くから紅花栽培が行われ、多くの紅花商人が出て活躍しました。また、立石寺を本寺たかせとした旧裔瀬村(山形市高瀬地区)でも紅花栽培が盛んに行われ、今も主要な産地です。

この地は、最上川がもたらす肥沃な土壌と朝霧の立ちやすい気候風士が良質な紅を多く含む紅花を育み、トゲのある紅花を摘み易くした栽培適地でしたので、やがて流域で広く栽培されるようになりました。江戸時代初期には全国生産量の50~60%を占め、質・量ともに日本一の紅花産地となったのです。元禄2年(1689年)山寺参詣の道すがら紅花畑を目にした松尾芭蕉は「眉掃きを悌にして紅粉の花」、「行末は誰が肌ふれむ紅の花」と句を詠みました。朝霧の中、一面に広がる紅花畑と若い娘たちが忙しく紅花を摘む様子が目に浮かぶようです。村々で栽培された紅花は「花買い」と呼ばれる商人が集荷し、紅花商人の屋敷で大勢の人の手で洗い干して箭餅状に丸めた 「紅餅」に加工してから最上川舟運と西回り航路(北前船)を介して上方へと運ばれました。当地に残る屏風絵はこうした様子を活き活きと今に伝えます。女性が口紅を塗る様子を表現する「紅をさす」という言葉の語源は紅花に由来します。産地でも紅花染めは行われており、体を温める効用を持つ紅花で染めた下着は、夏なお雪が残る出羽三山を参詣する行者がこぞって買い求めたと言います。

また、比叡山と古<から関係のある山寺の存在は、比叡山と縁故の深い 「近江商人」たちをこの地に惹きつけました。山形の領主最上義光も積極的に商売上手な近江商人を誘致して上方との取引を盛んにしようとしたことから、やがて近江商人は山形市の中心部に店舗を構え、地元の商人とともに紅花交易を通して莫大な富をもたらし上方文化をこの地に伝えるとともに、山寺への寄進も行いました。これら紅花商人が時代とともに商売の形態を変えながら、現在も山形の経済を牽引し続けていることはこの地ならではの特徴と言えます。

このように山寺と紅花には深いつながりがあり、山寺の存在が紅花を通してこの地域を経済面でも文化面でも大きく発展させたのです。

左:地域を見守る山寺からの景銀/右:豪膜屋敷の周囲に広がる紅花畑

山寺と紅花交易がもたらした
豊かな富と今に伝わる紅花文化

「最上紅花」と呼ばれた当地の紅花は、朱から真紅まで多様な色合いを出す貴重な染料であり、その価格は「米の百倍・金の十倍」と言われた高級品だったので、その交易は莫大な富を生みました。 商人が集まる町場や産地には豪農や豪商が己の財力と格式を誇示する屋敷を構えました。この地には、紅花交易全盛期を偲ばせ る立派な蔵屋敷が今も数多く残り、当時の栄華をうかがい知ることができます。また建物には当地ならではの特徴が見られます。

一つ目の特徴は、北前船で伝わった上方の座敷蔵文化と、羽州街道により伝わった江戸の店蔵文化が、同一敷地内で見られることです。屋敷の多くは、通りに面して門を建て、「店蔵(店舗兼住居)」、「座敷蔵(賓客をもてなす場)」、「仏蔵(仏間)」を建てました。江戸の土蔵造りは黒壁、上方は白壁を原則としますが、この地の蔵は全て白壁であり、上方文化の影響を見てとれます。また、羽州街道を利用した紅花交易も江戸時代の半ばから盛んになったので、江戸の店蔵文化が伝わりました。

二つ目の特徴は、豪雪地ならではの建物の配置が見られることです。敷地は、通りに面して短冊状に割られ、敷地の北に寄せて建て、敷地の南に門を建て日照を確保するための敷地内通路が設けられています。

三つ目の特徴は、 「座敷蔵」では上方文化の調度品が数多く見られることです。住居のうち最も格式が高く、床の間、棚、書院付きの座敷蔵は耐火性と保存性に優れ、贅を尽くして収集された可憐な雛人形や紅花染め衣装、屏風などを眺めると往時の華やかな暮らしをうかがい知ることができます。産地の荷主は取引上しばしば上方へ出張しており、華麗な雛人形や紅花染め衣装に魅せられて買い求め土産としたものが今に伝えられています。自慢の雛人形はひなまつりの時期にそれぞれの自宅や蔵を開放して公開されます。それは当地に春を告げる風物詩です。その豪華さと数の多さを目にした人々は、かつての紅花交易がもたらした莫大な富に思いをはせます。

また、山寺立石寺の開山とともに伝えられ、谷地八幡宮や慈恩寺において毎年奉納される上方舞楽は、紅花染めの神聖な赤い衣装が用いられ、華やかに舞う姿は人々を魅了します。慈恩寺にはあでやかに唇に紅をさす化粧を施された秘仏が安置され、信仰を集めています。

紅花交易は食文化にも影響を与えました。当地の郷士料理 「芋煮」は、秋に川原で食べる鍋料理です。紅花を上方に運んだ船頭が、地元の食材の里芋と帰り荷の棒鱈を川原で煮て食べたことが発祥と言われます。また、家庭料理として親しまれている「おみづけ(近江漬け)」は堰に流れる青菜等のくず野菜も無駄にせず漬物にして食し、倹約と商いに努めた近江商人由来の食文化です。

紅花は当地に莫大な富をもたらし、豊かな文化を今に伝えます。この地域を訪れる者は、山寺の情景と紅花畑、紅花豪農・豪商の蔵座敷そして雛人形など、様々な上方由来の文物を通して芭蕉もきっと目にしたに違いない、紅花で栄えた当地の隆盛を偲ぶことができるのです。

左:豪商屋敷が通りに並ぶ(門と白壁の店蔵)/中央:春には自宅や蔵を開放してひな人形を公開/中央:家庭料理「おみづけ」(近江漬け)

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