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#074 1300年つづく日本の終活の旅
圓教寺 六臂如意輪観世音菩薩
圓教寺は、性空上人が康保3年(966)に草庵を結んだことにはじまる。その後、上人は天禄元年(970)に桜の生木に如意輪観音を刻ませ、その像を祀ったのが摩尼殿(如意輪堂)である。俗に言う「立ち木観音像」であった。この当初の本尊は、残念ながら延徳4年(1492)に火災に遭い失われてしまった。本像は、本体から岩座まで含めて桜の一材から影出する、総高30センチあまり(ほぼ一尺)の六臂の如意輪観音である。霊木の桜の残材を用いているともいわれている。そもそも如意輪観音を桜から彫出するのは、如意輪観音が坐す光明山(補陀落山)に咲くという小白花が、わが国では桜とみなされたことによるものである。岩座の裏には銘文があり、延応元年に僧妙覚によって造られたことがわかる。本像は円筒形の冠をかぶっている点など10~11世紀頃の古像を模したとみられ、焼失以前の本尊像を模刻したものである。その故によるものか、延徳4年の火災で焼失した摩尼殿の初代本尊に代わり、摩尼殿本尊として奉安されてきた。一般に如意輪観音像は漆箔や彩色が施され、頬にあてる手は、手のひらを頬に向けていることが多いのだが、本像は本体に檀色を施しただけの素地仕上げ(切金は後補)とし、頬には手のひらではなく甲側の指先をあてる形となっている。切金は後補だが、性空上人の造立した原像に切金が施されており、それにかわる本尊となって以降に切金があらためて施された可能性もあり、一般的でない手の形も含め興味は尽きない。
西国第27番札所。
【文責】 大津市観光振興課
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