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2025.03.31
文化庁
日本遺産マルシェ・日本遺産10周年記念式典レポート
晴天に恵まれた2月15日(土)〜16日(日)、京都の東本願寺前市民緑地・お東さん広場にて『日本遺産マルシェ in 京都』が開催されました。2月13日を「にほん(2)いさん(13)の日」としていることから、2月15日〜16日に行なわれた同イベント。今年は京都での開催となりました。
今回は各地の協議会が集った日本遺産マルシェと、15日夜・二条城二の丸御殿台所で行なわれた『日本遺産10周年記念式典』の模様をお届けします。
今回は各地の協議会が集った日本遺産マルシェと、15日夜・二条城二の丸御殿台所で行なわれた『日本遺産10周年記念式典』の模様をお届けします。
日本遺産マルシェ 〜1日目〜
今回の日本遺産マルシェでは、協議会やオフィシャルパートナーなど全部で104のブースが参加し、特産品の販売や資料展示、ワークショップの企画などを通じて日本遺産を紹介しました。ストーリーにちなんだ衣装を着ての地元の日本遺産アピールや、オフィシャルパートナーのゆるキャラたちの登場で、会場はとても賑わいを見せました。
源泉100%の温泉を運び、足湯・手湯ブースを作るというユニークな展示をしていたのは、鳥取県・三朝町の三朝温泉。『六根清浄と六感治癒の地 〜日本一危ない国宝鑑賞「三徳山」と世界屈指のラドン温泉「三朝温泉」へ〜』というストーリーで日本遺産に認定されています。時折寒さを感じる気候ということもあり、足湯・手湯は大賑わい。期間中、日本人はもちろん海外の観光客やお子さんも足湯を堪能していました。足湯の後は、銘菓『因幡の白兎うさぎ』のお土産もいただけました。
「もともと三朝温泉は観光地として有名でした。しかし日本遺産に認定されたことで旅館などの施設から、“歴史に紐づいてお客様にご案内できるようになった”と言われるようになりました。地元の人の地域への理解が深まったように感じます」という協議会の方のコメントが印象的でした。
◆◆◆
日本遺産を通して、改めて地域文化を守り続ける気概を感じたのが能登です。2024年1月の能登半島地震、同年9月の能登半島豪雨に見舞われた能登。『灯(あか)り舞う半島 能登。〜熱狂のキリコ祭〜』というストーリーで日本遺産に認定されています。もともと能登は祭が多い地域で、7月〜10月の間に200もの祭が開催されてきました。その中でもキリコと呼ばれる灯籠を担ぐ祭は、能登の祭の代表格。大きいもので重さ2t、高さ15m、担がず押し曳きするキリコは4tに及ぶものもある、地域によって多彩な魅力を持つ祭です。しかし協議会の方にお話を伺うと、やはり地震・豪雨の影響で、祭は減少。開催が難しくなった地域も少なくないそうです。
「地震・豪雨によってキリコ自体の損壊はもちろん、祭の担い手も大きく減ってしまいました。しかしキリコ祭は地域住民にとって心の拠り所です。キリコを再生し、能登に残る祭の担い手を集めて、少しずつ復興に向けて動き始めています」とのこと。心の拠り所であるキリコ祭の再生の息吹を感じたブースでした。
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ワークショップを開催しているブースも多数。徳島県の『藍のふるさと 阿波 〜日本中を染め上げた至高の青を訪ねて〜』では、藍染した生地で缶バッチを制作したり、新潟県の『「なんだ、コレは!」 信濃川流域の火焔型土器と雪国の文化』では、火焔型土器コップを作るペーパークラフト体験があったり、長崎県の『国境の島 壱岐・対馬・五島〜古代からの架け橋〜』では、自宅で五島手延うどんを食べる際に欠かせないと言われるうどんすくい棒のワークショップが開催されていました。
また今年度から始まったのが、日本遺産オフィシャルパートナーシッププログラム。文化庁と企業等が相互に協力し、日本の文化・伝統の魅力を国内外に向けて発信し、日本遺産ストーリーの体験・体感につなげることで、日本の有形・無形の魅力ある文化資源への理解を深めるとともに、日本遺産地域の活性化につなげるためのプログラムです。今回の日本遺産マルシェではパートナーシップ締結企業等もブースを出展していました。
たとえば阪急交通社・近畿日本ツーリストのブースでは、日本遺産に関連したパッケージツアーの紹介を行なっていました。また本四高速(本州四国連絡高速道路)やNEXCO、JRなどの企業でも「日本遺産への道をつなぐ」というミッションのもと、今後に向けた取り組みを検討しているとのこと。協議会・企業等が一緒になって日本遺産を盛り上げていく様子を、ダイレクトに感じることができました。
幻想的な雰囲気の「日本遺産10周年記念式典」
15日に、『日本遺産10周年記念式典』が二条城二の丸御殿台所で開催されました。二条城は世界遺産、二の丸御殿は建物自体が国宝。とっぷりと日が暮れ、最小限の灯りの幻想的な雰囲気の中で記念式典が行なわれました。
開会と共に披露されたのは、岡山県高梁市の備中神楽。備中地方で行なわれている神楽で、荒神(こうじん)を勧誘し、その神前で演じられています。天狗に扮した4名が太鼓の音に合わせて舞う姿は圧巻そのものでした。
備中神楽の興奮冷めやらぬまま登壇したのは、主催者である文部科学省 あべ俊子文部科学大臣です。
あべ文部科学大臣:「日頃より日本遺産を応援していただいている皆様、認定地域の皆様によって、日本遺産は一歩ずつ進んでいます。さらなる飛躍に向けて文部科学省としても一層全力で取り組んでいきます」と挨拶がありました。
続いて、来賓である公明党文部科学部会長 文化芸術振興会議長 衆議院議員 浮島とも子氏、自由民主党 日本遺産推進議員連盟 事務局長 参議院議員 赤池 誠章氏による挨拶が行なわれました。
浮島氏:「日本遺産は、地域の子供、住民が誇りを持てるような認定であることを、何よりも大切にしなければいけません。さらに今年は、民間のオフィシャルパートナーシップもスタートしました。今後も官民が力を合わせて、日本遺産を盛り上げていきましょう」
赤池氏:「日本遺産の取り組みが始まって10年。これからも専門家の厳正な判断のもと、各地域の魅力が磨かれることを期待しています。そして日本遺産の知名度向上にも、一層取り組んでいきたいです」
と、両氏から日本遺産のさらなる魅力向上に期待が寄せられました。
浮島氏:「日本遺産は、地域の子供、住民が誇りを持てるような認定であることを、何よりも大切にしなければいけません。さらに今年は、民間のオフィシャルパートナーシップもスタートしました。今後も官民が力を合わせて、日本遺産を盛り上げていきましょう」
赤池氏:「日本遺産の取り組みが始まって10年。これからも専門家の厳正な判断のもと、各地域の魅力が磨かれることを期待しています。そして日本遺産の知名度向上にも、一層取り組んでいきたいです」
と、両氏から日本遺産のさらなる魅力向上に期待が寄せられました。
【来賓】 | 自由民主党衆議院議員 島田智明氏、勝目やすし氏代理秘書 京都市長 松井孝治氏 小樽市長 迫 俊哉氏 小浜市長 杉本和範氏(特別重点支援地域) 若狭町長 渡辺英朗氏 会津若松市長 室井照平氏(令和6年度日本遺産連盟会長) 倉敷市長 伊東香織氏(令和6年度日本遺産連盟副会長) 八王子市長 初宿(しやけ)和夫氏(令和6年度日本遺産連盟幹事) 江差町長 照井誉之介氏(令和6年度日本遺産連盟北海道・東北ブロック幹事) 三島市長 豊岡武士氏(令和6年度日本遺産連盟中部ブロック幹事) 安来市長 田中武夫氏(重点支援地域) 三朝町長 松浦弘幸氏(重点支援地域) 津和野町長 下森博之氏(重点支援地域) |
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そして開催地である京都市長・松井孝治氏からの挨拶では、「京都の中心地だけでなく、京都全体さらには周辺地域全体で包括的に日本の観光を盛り上げていきたい。日本遺産10周年を機に、地域間の絆を深めていきたい」というコメントが寄せられました。
本式典では「北海道の『心臓』と呼ばれたまち・小樽 ~『民の力』で創られ蘇った北の商都」の日本遺産認定証交付式も行なわれました。
迫市長は「北海道はほかの地域と共に北前船のストーリーで認定をいただいています。その上で小樽市単独で日本遺産の認定を取ることは、地域の悲願でした。“小樽は北海道の心臓”というのは、小林多喜二の小説の一説。今回の認定で、地域住民の誇りの醸成はもちろん国内外の観光客にも“小樽は北海道の心臓”という歴史を伝えていきたい」と喜びをにじませていました。
迫市長は「北海道はほかの地域と共に北前船のストーリーで認定をいただいています。その上で小樽市単独で日本遺産の認定を取ることは、地域の悲願でした。“小樽は北海道の心臓”というのは、小林多喜二の小説の一説。今回の認定で、地域住民の誇りの醸成はもちろん国内外の観光客にも“小樽は北海道の心臓”という歴史を伝えていきたい」と喜びをにじませていました。
そしてもう一つ注目のコンテンツとなったのが、今年度創設された特別重点支援地域(日本遺産プレミアム)に選ばれた「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群 〜御食国(みけつくに)若狭と鯖街道〜」の小浜市長 杉本和範氏が登壇し、「小浜市では、日本遺産のテーマを軸にしたコンテンツを増やすことに力を入れています。たとえば鯖街道を走る77kmのマラソンやサイクリングツアー、古民家や道の駅の改修も進めています。日本遺産を通して文化観光を充実させることで、着実に地域活性化が進んでいます」と、日本遺産プレミアムの効果と地域の変化を話されていました。
各首長の挨拶ののち、日本遺産大使の紹介が行なわれました。今回登壇したのは、日本遺産名誉大使・料理人 村田吉弘氏、日本遺産大使・能楽師 大倉正之助氏、そして新たに日本遺産大使となった、作家の三浦しをん氏、車いすラグビーのパラリンピアン 池透暢(いけ ゆきのぶ)氏(海外遠征のため欠席)の紹介がありました。
三浦氏:「日本遺産を知ることで、旅に出る楽しみが増えました。色々な場所を旅して、作品にも落とし込んでいきたいです」
村田氏:「日本の食文化を海外に伝えることはもちろん、日本遺産を軸にした食文化を通して地域古来の食文化の復元や観光の盛り上がりを支えたい」
大倉氏:「日本由来の茜や麻を使った鼓の復元や、古くから続く能舞台を使った能の公演を各地で行ないたい」
など各氏の分野を活かし、日本遺産を盛り上げていくというコメントが寄せられました。
三浦氏:「日本遺産を知ることで、旅に出る楽しみが増えました。色々な場所を旅して、作品にも落とし込んでいきたいです」
村田氏:「日本の食文化を海外に伝えることはもちろん、日本遺産を軸にした食文化を通して地域古来の食文化の復元や観光の盛り上がりを支えたい」
大倉氏:「日本由来の茜や麻を使った鼓の復元や、古くから続く能舞台を使った能の公演を各地で行ないたい」
など各氏の分野を活かし、日本遺産を盛り上げていくというコメントが寄せられました。
左から、日本遺産大使・作家 三浦しをん氏、日本遺産名誉大使・料理人 村田吉弘氏、日本遺産大使・能楽師 大倉正之助氏
和やかな雰囲気の中、続いて披露されたのは開催地京都の伝統芸能である『柳川三味線』。最古の三味線と言われる柳川三味線のハリのある音色が静寂の中で響き渡り、会場は改めて静かな熱気に包まれました。
◆◆◆
最後に登壇したのは、日本遺産連盟会長 室井照平会津若松市長と日本遺産連盟副会長 伊東香織倉敷市長。会津若松市は昨年10月に開催された日本遺産フェスティバルの開催地域。東北初の開催として、マルシェ・フォトコンテスト・公開講座など2日間で16,000名の来場者で盛り上がった様子をご紹介いただきました。
そして来年度の開催地は倉敷市。「日本遺産を、自分の自治体のアイデンティティを見直すキッカケにしたい。次年度のフェスティバルでは、地元の歴史や魅力、倉敷の美観地区で皆様をお迎えします」と開催に向けた意気込みをお話されました。
こうして閉会した日本遺産10周年記念式典。日本遺産を軸に地域の観光や文化的背景を見直すことで、観光はもちろん地元の人のシビックプライドを醸成したいと口を揃える首長の皆様のコメントが印象的でした。
京都から日本、世界へつながる日本遺産マルシェ 〜2日目〜
雨予報だった翌日は、幸いにも晴天。日曜日ということもあり、10時の開始前から多くの人で賑わっていました。前日のマルシェに加え、日曜日はステージイベントも多数開催されました。
各協議会によるクイズ大会やブースの紹介、さらにオフィシャルパートナー・日本遺産普及協会による、第1回日本遺産アワードの発表も行なわれました。こちらは日本遺産検定に合格した日本遺産ソムリエが、「実際に訪れてみて魅力的だと感じた日本遺産」「これから訪れてみたい魅力的な日本遺産」を上位3地域ずつ選出して表彰するもの。
実際に訪れてみて魅力的だと感じた日本遺産部門
第1位 | 「いざ、鎌倉」 ~歴史と文化が描くモザイク画のまちへ~ |
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第2位 | 「信長公のおもてなし」が息づく戦国城下町・岐阜 |
第3位 | 関門“ノスタルジック”海峡 ~時の停車場、近代化の記憶~ |
これから訪れてみたい魅力的な日本遺産部門
第1位 | 六根清浄と六感治癒の地 ~日本一危ない国宝鑑賞と世界屈指のラドン泉~ |
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第2位 | 灯(あか)り舞う半島 能登 ~熱狂のキリコ祭り~ |
第3位 | 祈る皇女斎王のみやこ 斎宮 |
選出された各協議会の皆様が賞状を受け取りました。
◆◆◆
こうして大盛況の中で開催された日本遺産マルシェ。どのブースからも、地域の魅力を発信したいという熱意と地元の歴史への誇り、さらには認定地域同士のつながりを感じることができました。
日本遺産が制定されて10周年となった今年度。小樽市のストーリーの日本遺産認定や、企業等との協力関係を結ぶオフィシャルパートナーシッププログラムの創設、また、特別重点支援地域(日本遺産プレミアム)の創設といった、新しい動きが生まれています。10年かけて育まれた日本遺産は地域住民のシビックプライドの醸成や、次の世代へ歴史をつなげる取り組みの活性化を通して全国に着実に根付いています。世界や世代を超えて注目されている日本の歴史文化。日本遺産はそのキッカケとして、今後も大きな役割を果たすと言えるでしょう。
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