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2023.07.12

特集

日本遺産巡り#15◆丹波篠山デカンショ節 -民謡に乗せて歌い継ぐふるさとの記憶-

400番を超える民謡「デカンショ節」の舞台をめぐる旅

およそ400年にわたり、時代ごとの風土や文化、まちの風景を歌詞に乗せて育まれてきた兵庫県丹波篠山(たんばささやま)市の「デカンショ節」。毎年新しい歌詞が付け加えられ、その歌詞は400番を超えているといいます(2023年現在)。

そんな、他にはないユニークな特徴を持つ民謡デカンショ節では、丹波篠山の数々の魅力が歌われています。歌詞に登場する地や文化を、丹波篠山市 商工観光課 小林真弓さんに案内していただきました。
デカンショ節を知れば、丹波篠山の魅力がわかる!

デカンショ節を知れば、丹波篠山の魅力がわかる! 丹波篠山市 商工観光課小林真弓さん

小林さんは市役所で勤務をしながら、デカンショ節の歌い手、三味線の演奏者としても活躍しています。過去にはNHKのど自慢でデカンショ節を歌い、チャンピオンになった経験もある実力者です。デカンショ節にまつわる場所をご案内いただく前に、毎年加わっていくというデカンショ節の歌詞について、素朴な疑問を投げかけてみました。
毎年加わる、デカンショ節の歌詞はどうやって決まる?
――デカンショ節は、毎年新しい歌詞が加わっていくそうですが、どのように歌詞が決まるのでしょうか?

小林さん:ここ10年ほどは毎年、丹波篠山市が、市内に残る美しい情景、伝統行事、特産物などをテーマに、丹波篠山市の魅力が伝わるような歌詞を公募しています。審査員によって選ばれた歌詞は新たにデカンショ節に加わり、大賞、優秀賞の方には応募された歌詞の入った丹波焼が贈呈されます。実は、令和4年度、私が考えた歌詞も優秀賞に選ばれたんですよ。

毎年加わる、デカンショ節の歌詞はどうやって決まる?

――毎年、歌詞が加わっていく民謡というのは、とても珍しいですよね。小林さんが考えた新しい歌詞はどのような内容だったんですか?

小林さん:デカンショ節は400番もありますが、まだまだ歌詞になっていないものも多いんです。今回「今までにない歌詞を作りたい」と思い、「丹波 越前 常滑 備前 信楽 瀬戸 揃うて 六古窯」という歌詞で応募しました。日本六古窯は、「きっと恋する六古窯─日本生まれ日本育ちのやきもの産地─」として日本遺産に認定されていますし、丹波焼は丹波篠山を語る上で欠かせない存在なんです。
「丹波焼」を知る、観る、作る!
日本でも有数の焼物の産地としても知られる丹波篠山。まずは、そんな丹波篠山が誇る丹波焼の魅力を感じられる場所にご案内いただきました。

【丹波焼が登場する歌詞】
「土の炎の匠の技が 冴える丹波の 登り窯♪」
 
全長なんと47m!丹波焼最古の登窯(のぼりがま)

丹波焼立杭登窯(最古の登窯) 丹波焼立杭登窯(最古の登窯)

最初に案内してもらったのが、今田町にある丹波焼最古の登窯(のぼりがま)。
明治28年に山の斜面に造られたこの登窯は、県指定重要有形民俗文化財に指定されています。

小林さん:ここは、現在も使用されている登窯の中では一番古いと言われている登窯です。全長は47mほどあり、すべて使用すると大小合わせておよそ4000個が入ります。 毎年春と秋のイベントではここで丹波焼が作られるんです。イベントの際には、丹波焼の販売が行われるだけでなく、ご自身の作品をこの窯で焼く方もいますね。夜通し交代で火を見るので、手間は掛かるんですが、やはり昔ながらの焼き方でできたものは味があります。

最古の窯 兵庫陶芸美術館公式サイトはこちら

丹波立杭陶磁器協同組合 理事長 市野達也さん 丹波立杭陶磁器協同組合 理事長 市野達也さん

平安末期から850年も受け継がれてきた
「丹波焼」

次に小林さんが案内してくれたのは、丹波立杭陶磁器協同組合 理事長 市野達也さんの窯元「市野伝市窯」。市野さんに、丹波焼の歴史と特徴について伺いました。

市野さん:丹波焼の歴史は古く、平安末期にまで遡ります。鎌倉、室町時代までは、一度に数点しか焼けない「穴窯」と呼ばれるものが主流で、日常生活で使う壺、瓶などを作っていたようです。江戸時代に入ると、朝鮮半島から大量生産ができる「登窯」が伝わり、商用としても丹波焼が広まっていきました。その後、昭和に入ってからは美術品として価値を見出す方も出てきます。
 

市野伝市窯の植木鉢ほか 市野伝市窯では、植木鉢を中心とした作品づくりをしています。

市野さん:丹波焼の特徴は「柔軟性」かもしれません。伝統を重んじながらも、新しいものに常にチャレンジしていく。それが丹波焼の良さだと思います。問屋がないため、自分たちが好きなものを作り、直接お客さんに販売できるのも特徴の一つですね。

丹波焼を一言で定義するのは難しいのですが、世間に出回ることの少ない丹波篠山の昔からの土を使うことは大切にしています。現在、組合員として50の窯元が加盟していますが、それぞれに個性、特徴があります。予約をすれば、各窯元で陶芸体験ができますよ。

ろくろを回している それぞれの窯元で丹波焼の陶芸体験ができるのは、丹波篠山ならではの魅力の一つです。

市野伝市窯 公式サイトはこちら

お気に入りの丹波焼と出会う!
​​​​​​​丹波焼の里 丹波伝統工芸公園 陶の郷
丹波焼の歴史と特徴を伺った後に訪れたのが、最古の登窯の近くにある「陶の郷」。
ここには、50軒の窯元の作品が一か所に集結した「窯元横丁」があります。
 

陶の郷 陶の郷

窯元横丁 窯元横丁

小林さん:お気に入りの作品、窯元を見つけて、そこを直接訪れてみるのもおすすめです。ここ陶の郷でも、陶芸体験を行っていますよ。レストランや、定期的に変わる展示もあるので、今田町エリアだけでも1日じっくり楽しめてしまいます。

マグカップを選ぶ 50の窯元ごとに異なる個性や風合いを比較しながら、お気に入りの丹波焼を選べるのはここだけです。

丹波焼の里 丹波伝統工芸公園 陶の郷のサイトはこちら

【今田町エリアへのアクセス】
電車・バス JR福知山線「相野駅」から、「清水」「兵庫陶芸美術館」行きの神姫バスで乗車10分「陶の郷前」で降車。または「立杭公会堂前」で降車。
お店ごとに異なる「ぼたん鍋」に舌鼓

ぼたん鍋 ぼたん鍋

【ぼたん鍋が登場する歌詞】
「雪がちらちら丹波の宿に 猪が飛び込む ぼたん鍋♪」

小林さん:丹波篠山に来たら、ぼたん鍋は外せません。市内にはぼたん鍋を提供するお店がたくさんあり、それぞれのお店で味わいが違うんです。通常はみんなで食べられる大きなサイズで提供されますが、一人前から提供しているお店もありますよ。個性豊かな味わいを、食べ比べてみるのもおすすめです!
篠山のシンボル「篠山城」

篠山城 篠山城

【篠山城が登場する歌詞】
「並木千本 咲いたよ咲いた 濠に 古城の 影ゆれて♪」

篠山城には天守閣がない!その理由とは?

小林さん:
「篠山城」という名称ですが、天守閣がないのが特徴です。石垣が他のお城と比べて大きく、しっかりと積まれているため守りが強固で、天守閣を築く必要がなかったそうです。ちなみに、篠山城は「日本100名城」の一つに選ばれています。

篠山城 大書院 大書院

小林さん:ここは大書院という建物で、お殿様がお客様をお出迎えしていた場所と言われています。平成12年に再建されたものですが、立派な木造建築で、中に入ると江戸時代の雰囲気を味わえますよ。映画のロケ地として使われることも多いんです。

上段の間 上段の間

篠山城跡 三の丸跡で行われる「デカンショ祭」

篠山城跡 三の丸跡で行われる「デカンショ祭」 篠山城跡 三の丸跡で行われる「デカンショ祭」

毎年8月15日・16日の2日間にわたり篠山城三の丸広場で開催されるデカンショ祭は、丹波篠山の夏の風物詩。地元の方はもちろん、全国からも多くの人が参加し賑わいを見せます。

小林さん:他の地域の盆踊りは、録音した音楽を流すことも多いと思いますが、デカンショ祭は、歌も三味線も全て生演奏なんです。それがデカンショ祭の自慢できる部分でもあるんですが、課題もあります。

どの地域でもこういった課題を抱えていると思うんですが、デカンショ節も「後継者不足」の状況です。デカンショ節の歌い手の中で私が一番若く、次は60代の方。その間にもいませんし、私よりも若い世代もいないんです。

知っているだけではなく、「自分もやりたい」と思ってくれる人たちを増やさないといけないと感じています。まずは、子どもたちにもデカンショ節の良さを伝えていきたいですね。
 
【篠山城大書院へのアクセス】
電車・バス JR福知山線「篠山口駅」から神姫グリーンバス篠山営業所行「二階町」バス停下車、徒歩5分

篠山城大書院のサイトはこちら

丹波篠山デカンショ館で、デカンショ祭の雰囲気を体験!
デカンショ館では、日本遺産構成文化財展示に加え、デカンショ節の発祥から変遷までをまとめた映像の上映、ARによってデカンショ祭の雰囲気が味わえる「バーチャルデカンショ踊りブース」が楽しめます。

――ところで、「デカンショ」とは、そもそもどんな意味があるんでしょう?

小林さん:諸説あり、いまだにはっきりとしたことはわかっていないんですが、合いの手の「どっこいしょ」、もしくは「出稼ぎしよう」が訛ったという説が有力です。

昔からこの辺りの人は「丹波杜氏(酒造り集団)」として、冬には神戸(灘五郷)の方に酒造りに出かける文化がありました。「デカンショ デカンショで半年暮らす あとの半年寝て暮らす」という歌詞も残っています。
 
【デカンショ館へのアクセス】
電車・バス JR福知山線「篠山口駅」から神姫グリーンバス篠山営業所行「二階町」バス停下車 徒歩5分

デカンショ館 公式サイトはこちら

享保19年創業の老舗で味わう、絶品黒豆スイーツ

享保19年創業の老舗で味わう、絶品黒豆スイーツ

【黒豆が登場する歌詞】

「丹波篠山お茶栗さんしょ 野には黒豆 山の芋♪」

丹波篠山の名物の一つが、黒豆です。中でも「丹波黒」と呼ばれる大粒の大豆は、兵庫県発祥の高級黒大豆として知られています。秋には、珍しい「丹波篠山黒枝豆」も収穫され,
秋の味覚を求める観光客の方で大変賑わいます。
小田垣商店

小田垣商店

享保19年創業の小田垣商店では、さまざまな種類の黒豆の加工品などを販売。店内にはカフェスペースが併設されています。

小林さん:黒豆はそのまま食べても美味しいですが、お土産などに人気なのが甘みの付いた「しぼり豆」です。小田垣商店のカフェでは、美しい中庭を眺めながら、黒豆を使った美味しいスイーツをいただけます。秋に丹波篠山を訪れた方には、ぜひ枝豆も食べていただきたいですね。
 

小田垣商店 公式サイトはこちら

鳳鳴酒造で酒蔵見学!デカンショ節を聴かせたお酒とは?
【お酒が登場する歌詞】
「酒は呑め呑め 茶釜でわかせ お神酒あがらぬ 神はない♪」

鳳鳴酒造

寛政9年創業の鳳鳴酒造では、お酒の販売だけでなく酒蔵見学ができます。音楽を聴いて育ったお酒「音楽振動酒」を製造、販売しているのも特徴です。

小林さん:ここでは、無料で酒蔵見学ができます。そして、ぜひ注目してほしいのがデカンショ節を聴かせたお酒「夢の扉」です。デカンショ節を流し、その振動でもろみを発酵させているんだそうです。

夢の扉 もろみにデカンショ節を聴かせて発酵させたお酒「夢の扉」

小林さん:ちなみに、宴会の席では「一本締め」が一般的だと思うんですが、丹波篠山の方は「デカンショ締め」をします。「ヨーイ ヨーイ デカンショ」と歌いながら、「デカンショ」で手を叩くんです。私がいる宴会は、必ずと言っていいほど「デカンショ締め」をしますね。デカンショ節で締めると、とっても締まるんですよ(笑)。それくらい、デカンショ節は、丹波篠山市民に根付いているんです。
 

鳳鳴酒造 公式サイトはこちら

丹波篠山ならではの品が充実!レトロな建物でお土産をチェック

大正ロマン館

大正時代に建てられた篠山町役場を改装した「大正ロマン館」。現在はお土産ショップ・レストランとして営業しており、丹波篠山ならではのお土産を購入できます。
 

大正ロマン館

小林さん:ここでは、今回ご紹介した黒豆や地酒をはじめ、あらゆる丹波篠山のお土産品を取り扱っています。この建物自体がとても素敵なので、ぜひ立ち寄ってから帰っていただきたいですね。

大正ロマン館 公式サイトはこちら

丹波篠山の魅力は、歌詞の数以上!
――最後に、小林さんが好きなデカンショ節の歌詞を教えてください。

小林さん:最近作られた「住んで嬉しやここ篠山に 愛と恵みの豊かさに」という歌詞が好きですね。私は生まれも育ちもここ丹波篠山で、何十年も住み続けられているのは、「人のあたたかさ」があるからだと思っています。みんなが知り合いのような感じで、いい人ばかりなんです。そうした雰囲気の良さもあってか、関西圏からの移住者の方も増えていますね。

――丹波篠山やデカンショ節に興味を持っている方に、メッセージをお願いします。

小林さん:デカンショ節、そして丹波篠山の魅力は、1日ではとても伝えきれません!今回ご紹介した場所以外にも、デカンショ節に登場する魅力的な場所や文化、名物がたくさんあります。

夏にはデカンショ祭にも参加していただきたいですし、それ以外の季節にも楽しめる場所がたくさんあります。ぜひ、数日かけて日本遺産の地であり、デカンショ節発祥の地である丹波篠山を楽しんでください。
 
【丹波篠山へのアクセス】
電車 新幹線「新大阪駅」から福知山線 特急「こうのとり」でおよそ1時間、「篠山口」で下車
【本稿で紹介した構成文化財】 デカンショ節
篠山城跡
小田垣商店
鳳鳴酒造
丹波立杭窯(作窯技法)丹波立杭登窯
丹波杜氏(酒造技術)

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