特集SPECIAL CONTENTS

2024.01.29

特集

日本遺産巡り#26◆「北総四都市江戸紀行・江戸を感じる北総の町並み」-佐倉・成田・佐原・銚子:百万都市江戸を支えた江戸近郊の四つの代表的町並み群-

江戸との深い繋がりで発展してきた「北総四都市」〜まち並み散策と体験から、独自の文化を満喫する〜

かつて街道や水運を活かし、江戸に住む人々の暮らしを支えてきた千葉県北部の「北総地域」。なかでも、現在の佐倉、成田、香取、銚子の四市は、江戸と深く繋がりながら、独自の発展を遂げてきました。それぞれの地域には、今でも江戸の雰囲気を感じられるまち並みや文化が色濃く残っています。

今回は、北総四都市と江戸の関係性、独自に育まれた文化について探るべく、各都市の方々に象徴的なスポットをご案内いただきました。

【佐倉】軍事・学問・政治と幅広く江戸を支えた街

江戸時代、城下町として交易や経済の拠点を担ってきた佐倉。現在も歴史的建造物が多く残るまち並みからは、当時の江戸の活気を感じ取ることができます。

そんな江戸の風情を満喫できる佐倉市内をご案内いただくのは、佐倉市役所文化課 学芸員の須賀隆章さん。まずは、江戸時代における佐倉の役割について伺いました。

佐倉市役所文化課 学芸員の須賀隆章さん 佐倉市役所文化課 学芸員の須賀隆章さん

須賀さん:今から400年以上前の江戸時代初頭、当時の領主であった土井利勝が佐倉城を築城したことを機に、佐倉が城下町として栄えるようになりました。土井氏は、徳川家将軍の三代に渡って仕えた人物。そのため、土井氏が領主を任された佐倉は、江戸の東側を守る重要拠点として人々に認識されていたんです。

旧堀田邸は、最後の佐倉藩主、堀田正倫の邸宅です。堀田氏は、佐倉地域の教育や産業の振興に大きく貢献した人物でもありました。

須賀さん:明治時代に建てられた堀田邸は、純和風の佇まいが特徴です。歴史的な背景を知らない方でも、建物自体の美しさを楽しんでいただけると思います。全面に芝生が植えられた庭園では、季節ごとにさまざまな景色を楽しめるのも魅力の一つです。毎年11月下旬から12月初旬にかけては、きれいな紅葉が見られますよ。

くぎかくし くぎかくし

橘

柱の釘をかくすための金具「くぎかくし」。堀田家の家紋や庭園の植物をモチーフに「桐」「橘」「楓」の3種類のデザインが施されています(写真は橘)。

須賀さん:ちなみに、佐倉市の小・中学校では、佐倉の歴史や文化、ゆかりの人物などについて学ぶ「佐倉学」と呼ばれる授業があります。正倫の功績もあり、堀田家は明治時代も佐倉の人々にとって親しみのある存在でした。佐倉学のおかげもあり、現在も堀田家は佐倉市民に親しまれています。
旧堀田邸で「禅の心」を体験!
江戸時代の武士たちは武芸に励む中、精神修行の一つとして、お茶を嗜んだり坐禅をしたりしていました。旧堀田邸で開催されている江戸の文化体験プログラム「禅の心」では、当時の武士が身につけていたものと同様の着物を着て、茶道や坐禅を楽しみながら当時の武士たちが感じていた禅の心に思いを馳せる、特別な体験ができます。

このプログラムで茶道や坐禅の作法を指導するのは、宝樹院 副住職の加藤泰惇さん。加藤さんは、お話上手で、親しみやすいお人柄。茶道や坐禅にまつわる歴史や文化を踏まえたお話とともに、作法を丁寧に教えてもらえるので、初めての方でも安心です。

宝樹院 副住職 加藤泰惇さん 宝樹院 副住職 加藤泰惇さん

加藤さんによると、実際に坐禅体験をされた方からは、「心が洗われた」「元気が出た」などの声が寄せられると言います。旧堀田邸の静かな雰囲気の中で精神統一をする非日常体験。取材日は、雨が強く降る日でしたが、坐禅中は心が穏やかになり、そうした雨音さえも心地よく感じられました。
【旧堀田邸へのアクセス】
アクセス ・JR佐倉駅から徒歩約20分。
・京成佐倉駅から徒歩約20分、または酒々井・成田方面行バス「厚生園入口」下車徒歩5分
住所 〒285-0025 千葉県佐倉市鏑木町274番地

旧堀田邸についてはこちら

体験ツアー「禅の心」についてはこちら

城下町佐倉に栄えた武家屋敷
佐倉には、当時の武士の生活様式が見てとれる3棟の武家屋敷が3棟現存しています。今から200年ほど前、この武家屋敷には中級から上級の佐倉藩士が暮らしていました。

武家屋敷内部のかまど 煙をまわすことで茅葺屋根を虫から守ります。

かぶと 武家屋敷では年に数回、甲冑試着会を行っています。詳しくは下記のリンク「佐倉の武家屋敷群についてはこちら」をご確認ください。

須賀さん:この武家屋敷では、江戸後期の建築様式が楽しめます。旧河原家住宅と旧但馬家住宅の屋根は、現代ではあまり見られない「茅葺屋根」です。また、それぞれの武家屋敷の造りの違いから、身分の差を知ることができるんです。例えば、玄関の広さは身分が上がるにつれて広くなるため、3棟それぞれ玄関の造りが異なります。武士の厳しい縦社会の一面が垣間見られますね。

【佐倉の武家屋敷へのアクセス】
アクセス JR佐倉駅から徒歩約15分、
または京成佐倉・田町車庫方面行バス「宮小路町」下車後、徒歩約5分
住所 〒285-0016 千葉県佐倉市宮小路町57番地

佐倉の武家屋敷群についてはこちら

佐倉は蘭学の発展の中心地「佐倉順天堂記念館」

旧佐倉順天堂は、蘭医学者の佐藤泰然が1843年に開いた蘭医学塾兼診療所。医療業界に、多くの門人を輩出したこの場所は、まさに現代医学の礎を築いた地と言えます。

須賀さん:現在は、当時の建物の一部を残し、記念館として医学史に関する資料や当時の医療器具などを展示しています。幕末にタイムスリップした医師の活躍を描いた漫画『仁-JIN-』では、この順天堂記念館や、武家屋敷をモデルにした絵が描かれているんですよ。

【佐倉順天堂記念館へのアクセス】
アクセス 京成佐倉駅から 徒歩約20分、
または酒々井・成田・白銀ニュータウン行バス「順天堂病院」下車すぐ
住所 〒285-0037 千葉県佐倉市本町81-11

佐倉順天堂記念館についてはこちら

次は、成田市へと向かいます。佐倉から成田への移動は、電車で10分ほどです。

【JR佐倉駅へのアクセス】
東京駅
成田空港
JR総武本線で約60分
JR成田線で約20分

【成田】成田参詣を楽しむ江戸庶民の面影に想いを馳せる

江戸時代、庶民の間で流行した成田参詣。多くの人々が江戸から成田街道を通り、成田山新勝寺へお参りに訪れました。

現在の成田市は、国際空港を構え、江戸文化を感じながらも国際色豊かな一面も楽しめる街。今回、成田の街をご案内いただくのは成田市役所 観光プロモーション課の森田隼人さん、生涯学習課の小川和也さんのお二人。まずは、おすすめの観光ルートや成田市ならではの魅力について伺いました。

左) 成田市観光プロモーション課の森田隼人さん 右) 成田市生涯学習課の小川和也さん  左) 成田市観光プロモーション課の森田隼人さん 右) 成田市生涯学習課の小川和也さん

小川さん:成田山新勝寺を訪れるのであれば、まずは成田駅から成田山新勝寺まで続く参道を歩いて、ぜひショッピングやグルメをお楽しみください。成田山新勝寺の本堂だけを見学される方も多くいらっしゃいますが、その奥にある、江戸時代に本堂とされていた「釈迦堂」や「光明堂」も見応えがあります。もう少し奥に行くと「平和大塔」があり、成田山新勝寺の歴史展の見学もできますよ。また、境内には成田山公園につながる道があります。静かで落ち着いた雰囲気のある、お散歩にちょうど良い公園なので、ぜひ併せて訪れてみてください。

成田祇園祭 成田祇園祭

森田さん:お祭りが多いことも成田の魅力の一つです。毎月何かしらのお祭りを開催しています。特に7月に開催される成田祇園祭は、江戸時代から続く歴史あるお祭りで、地元の人々にとっても大切な存在です。お囃子の方々は祭りに向けて1年を通して練習に励んでいます。お祭りの時期に合わせて成田に遊びにくるのもおすすめですよ。それでは、成田参道を巡ってみましょう!
門前町には参拝者が旅の疲れを癒したスポットがたくさん
成田駅から成田山新勝寺に続くおよそ800mの参道。江戸時代から愛されてきた旅館や食事処が残る町並みからは、江戸時代の活気を感じ取ることができます。

一粒丸三橋薬局 一粒丸三橋薬局

重厚感のある外観が特徴的な「一粒丸三橋薬局」は、江戸時代中頃に創業した老舗の薬屋です。こちらのお店では、江戸時代から人々に服用されていたという「はらのくすり成田山一粒丸」を購入できます。

【一粒丸三橋薬局へのアクセス】
アクセス 京成成田駅、
またはJR成田駅から徒歩約15分
住所 〒286-0027 千葉県成田市仲町363番地

一粒丸三橋薬局 公式サイトはこちら

川豊本店 川豊本店

江戸時代、成田参詣に訪れた人々も楽しんだとされる「うなぎ」は、参道の名物グルメです。中でも人気を集めるのは、老舗うなぎ店の「川豊本店」。かつて旅館だった建物を活かして作られた店舗は、国登録有形文化財に登録されています。

【川豊本店へのアクセス】
アクセス 京成成田駅、
またはJR成田駅から徒歩約12分
住所 〒286-0027 千葉県成田市仲町386番地
江戸時代から活気に満ちていた「成田山新勝寺」

成田山新勝寺(本堂) 成田山新勝寺(本堂)

江戸時代の成田参詣がブームとなり、人気の旅先となった成田山新勝寺。歌舞伎の市川家と深い繋がりがあることでも有名です。きっかけは、初代市川團十郎の時代に遡ります。

後継に恵まれずに困っていた初代市川團十郎が成田山新勝寺でご祈祷したところ、後の2代目を授かり、以降、市川家は代々成田山新勝寺を深く信仰するようになります。市川團十郎が、成田山新勝寺でのエピソードを題材とした演目を披露したこともあり、当時の江戸庶民の間で成田参詣が大ブームとなりました。

そうしたブームもあり、江戸時代に興隆した成田山新勝寺。現在の境内に色濃く残る江戸文化について、成田山新勝寺 企画課 中峰照希さんにお話を伺いました。

成田山新勝寺 企画課 中峰照希さん 成田山新勝寺 企画課 中峰照希さん

中峰さん:現在の本堂に至るまでの間に、江戸時代には2つの本堂が建てられ、今も境内にもその建物が残っています。最初の本堂(光明堂)は1701年に、もう一つの釈迦堂は1858年に、そして現在の本堂は1968年に建立されたものです。本堂の大きさがどんどん拡大していく様子からも、当時の盛況ぶりが感じ取れます。
境内では、成田山新勝寺が江戸の文化に大きく影響を受けた様子が散見されると、中峰さんは続けます。

成田山新勝寺(仁王門) 成田山新勝寺(仁王門)

総門近くにある市川家が寄贈した石灯籠 総門近くにある市川家が寄贈した石灯籠

中峰さん:例えば、仁王門の近くにある「魚がし」の文字が書かれた大提灯は、江戸時代に築地のお寿司屋さんの旦那衆から寄進されたものです。その他にも、歌舞伎の市川團十郎さんや火消しの旦那衆から奉納いただいた石灯籠や石碑もご覧いただけます。歌舞伎に火消し、築地の寿司屋と、まさに江戸との深い交流が見受けられますね。

本堂の真横にある、三重塔の派手な装飾も江戸文化を象徴するものだといいます。色濃く残る江戸の文化を辿りながら境内を散策するのも一つの楽しみ方です。
成田山新勝寺で「写経体験」に挑戦
成田山新勝寺では、現在でも仏教修行の一環として取り組まれている写経を体験することができます。功徳を重視し、作法を忠実に守りながら進められるのが成田山新勝寺での写経体験の特色です。
写経体験に参加した森田さんに感想を伺いました。

森田さん:初めの3〜4行目を書いている時は、「まだ4分の1くらいか」と思ってしまいましたが、気づくとすっかり没頭していました。終わったあとは、とても清々しい感じがしますね。


写経を体験された方からは、他にも「気持ちが穏やかになった」「リラックスしたひと時が過ごせた」といった声が多く聞かれるといいます。

中峰さん:写経の体験時間は30分から1時間ほどです。その長い時間じっとすることは、日常生活の中ではあまりないことだと思います。目の前のことに集中して、ただ自分を見つめる写経の時間は、現代の人にとって貴重なものです。

【成田山新勝寺へのアクセス】
アクセス 京成成田駅、
またはJR成田駅から徒歩約10分
住所 〒286-0023 千葉県成田市成田1番地

成田山新勝寺 公式サイトはこちら

写経体験についてはこちら

続いては、香取市へと向かいます。成田から香取までは電車で30分ほど。1泊2日の旅行などで北総四都市を巡る方は、成田で宿泊して翌日、香取に向かうのもおすすめです。

【香取】「街道」と「舟運」が交差する江戸の要所

香取市佐原伝統的建造物群保存地区 香取市佐原伝統的建造物群保存地区

江戸時代から舟運で栄えた香取市。米やお酒など江戸へ運ぶ物資の集積地としての機能を果たしてきた佐原では、今も江戸時代を思わせる景観を楽しむことができます。

今回、そんな香取をご案内いただくのは、香取市 生涯学習課 文化財班の岡澤佑介さん。まずは、「小江戸」と称される人気観光スポット、佐原のまち並みの特徴について伺いました。

香取市 生涯学習課 文化財班の岡澤佑介さん 香取市 生涯学習課 文化財班の岡澤佑介さん

岡澤さん:佐原では、地域の方たちが中心となり、行政と連携しながら景観を守っています。この地域に残された歴史的建造物のなかには、現在も江戸時代当時と変わらずに使われている建物も少なくありません。例えば、1800年に創業した正上醤油店では、建築当初の建物の状態を保つ店舗が残っています。現在でも、隣接した店舗で佃煮などの販売が行われているんですよ。まさに「生きた町」と言えるのが佐原のまち並みの特徴ではないでしょうか。

写真右から県指定店舗、県指定土蔵、販売店舗(未指定) 写真右から県指定店舗、県指定土蔵、販売店舗(未指定)

商家の街として栄えた佐原に暮らす人々ならではの気質について、岡澤さんは次のように話します。

岡澤さん:身分制度が厳しかった江戸時代においても、佐原の人々には、上の人の顔色を伺わずに商売をするような自由な気質がありました。また、名主が主体となって町民を守りながら発展してきた街ですので、「江戸とは違うぞ」という誇りも持っていたようです。この街の人々は、江戸にあるものを取り入れながら、より良いものを作ろうとしました。そうした街の人の気質は「江戸優り(えどまさり)の文化」という言葉にも表されています。
そうした佐原の文化は、江戸時代から現代まで続く「佐原の大祭」からも感じ取ることができるそう。

岡澤さん:佐原の大祭で使用されている山車は江戸で行われる神田祭の山車などとは、造りや飾りつけが異なります。山車の大きな特徴は、山車の天上部に大きな飾り物がある点です。佐原では、江戸随一の職人によって作られた人形や彫り物、額などを取り入れながら、独自の文化をかたち作ってきました。

佐原の大祭(夏)(提供:香取市教育委員会) 佐原の大祭(夏)(提供:香取市教育委員会)

佐原の大祭(秋)  (提供:香取市教育委員会) 佐原の大祭(秋)  (提供:香取市教育委員会)

佐原の街は、小野川を挟んで東西に分かれています。東側は本宿、西側は新宿と呼ばれ、それぞれの地域に鎮守の神様がいます。そのため、山車行事も夏と秋の別日で行われているそうです。現在も、両地域が切磋琢磨しながら祭りを盛り上げています。

【香取市佐原伝統的建造物群保存地区へのアクセス
アクセス JR成田線「佐原駅」から徒歩約15分

香取市佐原伝統的建造物群保存地区についてはこちら

佐原の大祭についてはこちら

水運で栄えた小江戸を満喫できる体験アクティビティ

着物で街歩きをする観光客(提供:香取市教育委員会) 着物で街歩きをする観光客(提供:香取市教育委員会)

歴史的建造物が多くある佐原のまち並みを、着物で巡るのもおすすめです。観光休憩所である「さわら町屋館」には、着物のレンタルと着付けをしてもらえる「山田屋呉服店」があります。施設内には、ネイルサロンやカフェなども併設されており、季節に合わせたイベントやコンサートなども定期的に開催されているため、最近は若い観光客の方も増えているといいます。

【さわら町屋館(山田呉服店)へのアクセス】
アクセス JR成田線 佐原駅から徒歩約10分
住所 〒287-0003 千葉県香取市佐原イ499-1

着物で街歩き体験についてはこちら

舟運で栄えた佐原では、舟からのまち並みを楽しむ「さわら舟めぐり」が体験できます。「さわら舟めぐり」は、小野川沿いを30分間ほどかけて遊覧するツアー。歴史的な建造物と小野川、川沿いに並ぶ柳の木が一体となった風情のある景観を、ゆったりと満喫してみてはいかがでしょうか。

さわら舟めぐり乗り場周辺 さわら舟めぐり乗り場周辺

【舟めぐり乗り場へのアクセス】
アクセス JR成田線「佐原駅」から徒歩約10分
住所 〒287-0003 千葉県香取市佐原イ1730-3

舟巡りについてはこちら

伊能忠敬旧宅
50歳から実測による日本地図を製作したことで知られている伊能忠敬。17歳の時に、佐原の名主の伊能家に婿入りし、家業の発展に貢献しながら、当主として活躍しました。

伊能忠敬旧宅 伊能忠敬旧宅

岡澤さん:伊能忠敬といえば隠居してから地図を製作したエピソードが有名ですが、旧宅では、名主として活躍していた頃の忠敬の様子が学べます。商人としての才覚があった伊能忠敬は、現在の旧宅よりも広い土地を構え、醸造業などを営みながら生活していたといわれています。江戸時代に起こった飢饉の際には、名主として地域住民に米を配った記録も残されており、佐原の地域住民にとって大きな存在だったと考えられます。

【伊能忠敬旧宅へのアクセス】
アクセス JR成田線「佐原駅」から徒歩10分
住所 〒287-0003 千葉県香取市佐原イ1900-1

伊能忠敬旧宅についてはこちら

江戸庶民から篤い信仰を集めた「香取神宮」

香取神宮(楼門) 香取神宮(楼門)

江戸庶民の間では、香取神宮、鹿島神宮、息栖神社の3箇所を参詣する「東国三社巡り」が流行していました。江戸時代には、徳川家からの庇護を受けていたという香取神宮。岡澤さんに江戸時代の香取神宮の様子について伺いました。

岡澤さん:鮮やかな朱色が目を惹く楼門は、1700年に徳川幕府が建てたものです。同じ時期に、正面の拝殿の奥にある本殿も建てられました。檜皮葺の屋根を備え、黒漆で塗られた
三間社流造りの本殿は全国的に見ても大きいのが特徴で、荘厳な雰囲気が感じられます。

香取神宮(本殿) 香取神宮(本殿)

岡澤さん:ちなみに、江戸時代に使われていた参道は、現在の参道とは異なり、本殿の西側にありました。江戸時代の参拝者は、舟で香取神宮を訪れていたので、船着場に近い旧参道を通ってきていたんです。一目見ただけでは、参道の面影を感じられませんが、当時の道幅がわかる痕跡や、側溝をまたぐためにかけられた橋などは今でも残っているんです。そうした痕跡を探しながら歩いていただいても楽しいかもしれません。
【香取神宮へのアクセス】
アクセス JR成田線「佐原駅」からコミュニティバスで約15分
住所 〒287-0017 千葉県香取市香取1697-1

香取神宮の公式サイトはこちら

最後は、香取から電車で50分ほどの場所に位置する銚子へ向かいます。

【銚子】江戸の食文化を支えた!漁師町の面影を探る

江戸に向かう利根川の水運ルートができ、江戸時代に漁港の町として栄えた銚子。この地でよく水揚げされる鰯を乾燥させて作られた肥料「干鰯(ほしか)」の生産も盛んに行われていました。鮮魚をはじめ、醤油や米などの多くの特産品を送ることで、江戸の食文化を支えてきた街でもあります。

そんな銚子をご案内いただくのは、銚子市教育委員会社会教育課 文化財・ジオパーク室 学芸員 常世田優紀さん。また、文化財ボランティアガイドの内匠五月枝さんと田中豊さんにも同行いただきました。まずは、みなさんと銚子ちぢみの藍染体験へ!
銚子ちぢみの藍染体験に挑戦!

江戸時代から銚子で受け継がれてきた織物、銚子ちぢみ。一般的な織物との違いは、その製造工程にあります。布を織るのに使用するのは、よって糊止めした糸。通常の織物よりも幅広く織られた布は、糊を落とすことでよりが戻り、縮みます。布が縮むことでできる表面の凹凸は「シボ」と呼ばれます。このように手間をかけて作られた「シボ」によって、銚子ちぢみ独特のサラッとした着心地が生み出されるのです。

銚子ちぢみで作られた作業衣は、海が近く、湿気の多い銚子で働く漁師たちに重宝されました。さらに、表と裏で異なる柄の入った銚子ちぢみの着物は、江戸の人々の間でも流行したそうです。

銚子ちぢみ伝統工芸館では、そんな銚子ちぢみの藍染体験ができます。今回、店主の常世田眞壱郎さんにご指導いただきながら、銚子ちぢみのハンカチを使った藍染体験をさせてもらいました。

銚子ちぢみ伝統工芸館の店主、常世田眞壱郎さん 銚子ちぢみ伝統工芸館の店主、常世田眞壱郎さん

小さなお子さまでも体験できるようにと、使う道具は輪ゴムや箸などシンプルなもの。染める準備ができたら、瓶に入った天然の藍で藍色に染めていきます。

常世田眞壱郎さん:藍染は、藍に入れた瞬間に藍色になるわけではないんです。最初は黄色っぽい色味をしているのですが、空気に触れた藍が酸化することで、次第に藍色へと変化していきます。

藍に染めた1回目の写真 藍に染めた1回目の写真

数回染めて酸化が進むことで、藍色に変化します 数回染めて酸化が進むことで、藍色に変化します

常世田さんの軽快なトークを伺いながら、染めの工程を繰り返していると、あっという間に白いハンカチが綺麗な藍色に染め上がりました。

藍染した銚子ちぢみのハンカチ 藍染した銚子ちぢみのハンカチ

常世田さんに、これから銚子ちぢみの藍染体験に訪れる方へのメッセージを伺いました。

常世田眞壱郎さん:自分で作った銚子ちぢみのハンカチは、ぜひ何度も使ってほしいですね。銚子ちぢみは芸術品ではなく実用品です。使って初めて良さがわかるので、飾るのもいいですが、ぜひたくさん使ってあげてください。

銚子ちぢみを次世代に残していくために、伝統を活かしつつ、新しいものも作っていきたいと語る常世田さん。店内では、銚子ちぢみを使った小物入れやコースターなども販売されています。大切な方へのお土産にもぴったりです。

【銚子ちぢみ伝統工芸館へのアクセス】
アクセス JR成田線「松岸駅」から徒歩5分
住所 銚子市松岸町3-228

銚子ちぢみ藍染体験についてはこちら

江戸時代に漁港町として整備された「銚子外川の町並み」

外川は、1658年、紀州から良い漁場を求めて銚子に辿り着いた漁師の崎山次郎右衛門によって整備されました。現在のまち並みからも、漁港町としてのさまざまな特色を垣間見ることができます。
常世田さん:地図で見るとわかりやすいのですが、外川は碁盤の目状に整備されています。南北にのびる8本の坂は、港へと通じていて、どの坂からも海がよく見渡せるんです。江戸時代に鰯漁が盛んだった頃、海での漁を終えた漁師たちは網をひいて、坂の上の干鰯場まで獲れた魚を運んでいました。東西にのびる横道は、生活道です。水揚げした魚が通る坂よりも数段高い場所にあり、水はけの良さが保たれるように工夫されていました。
 

住宅が、海に面して雛壇状に並んでいるのも外川の町の特徴。どの家の窓からも、漁船が見えるように、このようなかたちに整備されたといいます。こうした街の特徴からは、漁港町として栄えた当時の面影が感じとれます。

普段銚子で文化財ボランティアガイドをされている内匠さんは、外川の魅力についてこう話します。

内匠さん:外川には漁港の風景を求め、今でも多くの観光客の方がいらっしゃいます。「銚子石」と呼ばれる砂岩で造られた石垣や黒い屋根瓦など、銚子に古くから伝わる風景が今でも楽しめる点も魅力の一つです。また、外川に来たら、外川駅にもぜひ訪れてみてください。大正12年に開業された当時のままの駅舎が残されていて、テレビや映画の撮影地として使われることもあるんですよ。

外川駅 入口 外川駅 入口

外川駅 ホーム 外川駅 ホーム

【外川の町並みへのアクセス】
アクセス 銚子電鉄「外川駅」から徒歩約5分
住所 〒288-0014 千葉県銚子市外川町3-11006

外川の町並みについてはこちら

屏風ケ浦|江戸庶民に親しまれた「銚子の磯巡り」

江戸庶民の間では、自然が作り出した銚子の壮大な景観を巡る「銚子の磯巡り」が流行しました。激しい波によって作られた断崖絶壁の景色が見られる屏風ケ浦は、磯巡りのなかでも有名なスポットの一つです。
田中さん:屏風ケ浦を含む銚子の磯巡りは、東国三社参りのオプショナルツアーとしての位置づけだったとされています。東国三社は、茨城県にある鹿島神宮と息栖神社、千葉県にある香取神宮の三神社を巡るもの。江戸時代の人々は、香取神宮を参拝した後、利根川を下り、松岸で船を降りて銚子を訪れました。途中で犬岩や飯沼観音などに立ち寄りながら銚子の海岸をぐるっと巡り、最後に、名洗浜というところから屏風ヶ浦を眺めていったそうですよ。

左から文化財ボランティアガイドの内匠五月枝さん、銚子市社会教育課の常世田さん、文化財ボランティアガイドの田中豊さん

江戸時代の人々が見たような景観を、現代でも同じように楽しめるのも、銚子の魅力の一つです。

【屏風ケ浦へのアクセス】
アクセス JR「銚子駅」前からバス(乗り場5番、名洗・千葉科学大学行き)に乗車。
「千葉科学大学・マリーナ前」で下車し、徒歩約3分
住所 千葉県銚子市潮見町

屏風ケ浦についてはこちら

江戸時代、地域の特色を活かし、さまざまな役割で江戸を支えてきた北総四都市。当時の面影を残したまち並みや、江戸時代から伝わる祭礼など、このエリアにはたくさんの魅力があります。ぜひ四都市を巡り、日本遺産を肌で体感してみてはいかがでしょうか。

北総四都市について分かりやすくまとめられた漫画を読んでから訪れると、さらに現地の魅力を感じられるはずです。

千葉県制作「マンガで旅する北総四都市江戸紀行」(電子ブック)

ストーリーページはこちら

ページの先頭に戻る