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2023.08.10

特集

日本遺産巡り#17◆六根清浄と六感治癒の地 ~日本一危ない国宝鑑賞と世界屈指のラドン泉~

五感+心を癒す、自然エネルギーの宝庫。鳥取県三朝町でしか味わえない特別な体験とは?

三徳山と三朝温泉のプロモーション画像

鳥取県の中央に位置する三朝(みささ)町は、「六根清浄と六感治癒の地~日本一危ない国宝鑑賞と世界屈指のラドン泉~」として日本遺産に認定されています。

山岳信仰の聖地としても知られる「三徳山(みとくさん)」と、世界に誇る「ラドン泉」。この二つにはどのような繋がりがあるのでしょうか。
 
六根清浄と六感治癒とは?

誰でも無料で入浴できる「河原風呂」 誰でも無料で入浴できる「河原風呂」

所在地 〒682-0123 鳥取県東伯郡三朝町三朝903-1

露天風呂「河原風呂」 公式サイトはこちら

●登山によって「六根」を浄化させる

六根清浄とは、「眼・耳・鼻・舌・身・意(六根)」を、三徳山の急峻な岩肌を登り、荘厳な神仏に祈りを捧げることにより、六根を清らかに浄化させるという考え方です。

【六根清浄】
耳:道中、鐘楼堂での鐘音、読経で心を鎮める
眼:国宝「投入堂」の圧倒的な存在感や、原生的な自然林と一体化した建造物群。蔵王権現像を中心とした宝物群
舌:精進料理を食し「命」を頂くことを見つめ直す。山菜や栃餅、豆腐といった地産地消の豊かさに触れる
身:体を使った投入堂参拝登山による心地良い疲労
鼻:お香、石楠花の香で心を鎮める
意:修行の果てに辿り着く投入堂拝観で心の浄化
●温泉で「五感と心」を癒す体験

六感治癒は、「観・聴・香・味・触・心(六感)」を三朝温泉の優れた泉質の湯に浸かり、飲み、湯煙に身を置くことと、温泉街ならではの環境や自然の恵みにより癒すという考え方です。

【六感治癒】
聴:渓流のせせらぎや下駄の音の心地良さ
観:昭和風情を残す街並みや登録有形文化財を鑑賞する
味:山菜や栃餅、古酒などの地産品を食し、食文化の豊かさに触れる
触:温泉療法、昭和文化に触れる
香:入浴時の湯の香りに心を癒す
心:現代湯治によるココロとカラダの休養

三徳山で「六根」を清め、三朝温泉で「六感」を癒す一連の作法は「人と自然が融合する日本独自の自然観」を特徴的に示したもの。心と体を洗うことで、誰もが持つ清らかさが蘇る地が、日本遺産のまち「三朝」なのです。
誰でも「日本一危ない国宝鑑賞」ができる三徳山三佛寺(みとくさんさんぶつじ)
三徳山三佛寺の奥院である「投入堂(なげいれどう)」は、六根清浄の「眼」の核となる、断崖絶壁に建つ建造物。信仰の象徴である蔵王権現像を配し、「六根清浄」が満願成就する最終到達地です。投入堂に向かう道中は木の根や岩をよじ登るなど、険しい道のりであることから「日本一危ない国宝鑑賞」としても知られています。

一般の参拝登山も可能ですが、体力に自信のない方や、登山に慣れていない観光客のために2022年、双眼鏡を備え付けた東屋と駐車場を整備。誰でも気軽に国宝 投入堂を鑑賞できるようになりました。

三徳山三佛寺 米田執事次長 三徳山三佛寺 米田執事次長

全国的にも例がない!お寺なのに、神様を祀っている?

三徳山三佛寺で執事次長を務める米田さんは、三徳山と三佛寺の歴史と特徴について、次のように話します。

米田さん:三徳山は、飛鳥時代の慶雲三年(706年)、修験道の行場として開山したのが始まりです。嘉祥二年(849年)に、比叡山延暦寺の高僧であった慈覚大師 円仁(じかくたいし えんにん)によって、阿弥陀如来・釈迦如来・大日如来の三尊を安置したことで「三佛寺」と言われるようになったと伝えられています。お寺が最初にあり、そこが信仰の対象になったのではなく、自然崇拝の場所に、後からお寺ができたのです。

神仏習合、神仏混淆を色濃く残しており、本堂までは仏教色が、本堂より先は神道色が強いのが特徴です。奥院の国宝「投入堂」は神社建築、つまり神様を祀る社。中に祀っておられるのは「金剛蔵王権現」、つまり仏様が神様の姿になって現れたものなのです。三徳山に向かう途中には鳥居があり、本堂前には狛犬も設置されております。また、本堂の中、左右の蔵には二基の御神輿が入っているのも特徴の一つです。歴史家や建築家の方からは、これは全国的に見ても例のないものと聞いています。

三朝温泉の源泉は「株湯」と言われており、付近には大久保左馬之祐と白狼の像も設置されています 三朝温泉の源泉は「株湯」と言われており、付近には大久保左馬之祐と白狼の像も設置されています

三朝温泉の誕生の逸話「白狼伝説」とは?

三徳山は、三朝温泉とも深い繋がりがあります。その起源である「白狼伝説」について、米田さんは次のように説明します。

米田さん:平安の後期、源義朝が源氏再興の祈願のために日本全国の寺院に遣いを出し、お参りをさせました。この三徳山には、弓の名手であった大久保左馬之祐(おおくぼさまのすけ)が参拝に来たのですが、その途中、白い年老いた狼が現れます。左馬之祐は弓を引こうとしますが、神仏をお参りするところであること、またその年老いた獣というものは神様に近い存在だということから思い直し、逃がしました。

米田さん:すると、その日の枕元に妙見菩薩という仏様が現れ、狼を助けた御礼に「楠の株の根元に行き、そこから出る温泉によって人々の体を癒やしなさい」と伝えたと言います。これが三朝温泉の始まりであり、「白狼伝説」として伝えられています。

株湯から出る温泉は飲用として持ち帰ることができ、県外から来られる方も少なくないといいます。 株湯から出る温泉は飲用として持ち帰ることができ、県外から来られる方も少なくないといいます。

三徳山と三朝温泉はどちらも「自然のエネルギーを享受する場所」

株湯から出る温泉は飲用として持ち帰ることができ、県外から来られる方も少なくないといいます。
住所 〒682-0123 鳥取県東伯郡三朝町三朝634-1

公衆浴場・足湯・飲泉場「株湯」 公式サイトはこちら

このように、三徳山と三朝温泉は一体のストーリーとして捉えられています。米田さんは、どちらも「自然のエネルギーを享受する場所」であると続けます。

米田さん:我々が一般生活をしていると、六根がどんどん穢れていきます。これは、絶対に逃れることができないものです。しかし、昔から日本人は穢れた六根を清める方法を知っていたんですね。それが山に行くことなんです。

日本にとって「山」というのは、自然がたくさんあるところ。自然一つひとつに命があるわけですよね。草木一本、風、土、水、すべてに命がある、つまりすべて神様なんです。山へ行き、自然のエネルギーをいただくことで元気になって戻る。これが日本式の登山なんです。

温泉自体も、自然のパワー、自然の強力なエネルギー。三朝温泉というのは、さまざまな自然のエネルギーいただいて元気になる場所なんです。そういう意味で、三徳山と三朝温泉は切っても切れない関係にあるため、ぜひどちらにも訪れていただきたいですね。

三徳山三佛寺 公式サイトはこちら

三朝温泉は世界屈指の「ラドン泉」

左)三朝温泉観光協会職員 アントニーさん、右)日本遺産地域プロデューサー 三朝温泉旅館協同組合 理事長 沖田さん 左)三朝温泉観光協会職員 アントニーさん、右)日本遺産地域プロデューサー 三朝温泉旅館協同組合 理事長 沖田さん

旅館「三朝館」を経営しながら、日本遺産地域プロデューサー 三朝温泉旅館協同組合 理事長を務める沖田 雅浩さんに、三朝温泉の魅力について伺いました。

沖田さん:三朝温泉の最大の魅力は、放射能泉という国内でも希少な泉質を有する「ラドン泉」です。温泉に浸かることはもちろん、蒸気を吸ったり飲んだりしても、その効能を感じることができます。

あとは、温泉地ならではの雰囲気の良さ、古くからの日本の良き温泉街の風景も魅力の一つですね。私が個人的に好きなのは、川沿いに温泉街や旅館が立ち並んでいる風景です。これはどこの温泉地にでもあるものではないので、とても誇りに感じています。

また、日本遺産である「六感治癒」の部分でも、旅館の中でお風呂に入り食事をするだけでなく、美しい音に触れたり、緑の景色の中で目を癒したりと感性や感覚を癒す、ストレスを軽減する。そういったところで温泉地域と三徳山とが融合、連携しているところが、他の地域にはなかなか見られない三朝の魅力です。

温泉街の様子 温泉街の様子

三朝町の魅力に惹かれフランスから移住し、現在は観光協会で働くリエヴェン・アントニーさんは、三朝温泉の楽しみ方を教えてくれました。

アントニーさん:三朝に来た初日から、街の雰囲気が自分に合っていると感じました。一目惚れのような感じです。初めて温泉に入った日の夜は、よく眠れたのを覚えていますね。山に囲まれ、三徳川の流れるこの街の景色や雰囲気は、日本の原風景のようでとても好きですし、住めば住むほど愛情が深まっています。

匂いや景色はもちろん、聞こえる音もここにしかないものがあります。それらを意識しながら散歩をして、川のせせらぎの変化などに意識を向け、その感動によって心も癒されるというのが日本遺産の「六感治癒」の考えです。
町中にあるストーリーに触れる体験を
杖なし地蔵のある足湯「薬師の湯」 杖なし地蔵のある足湯「薬師の湯」
杖なし地蔵のある足湯「薬師の湯」 杖なし地蔵のある足湯「薬師の湯」

足湯・飲泉場「薬師の湯」 公式サイトはこちら

アントニーさん:町内全体にさまざまなストーリーがあるんですが、そのストーリーを体験すると、より滞在が楽しくなります。例えば「薬師の湯」という足湯の脇には「杖なし地蔵」があります。病気で杖をついてこられた方が、しばらく三朝に宿泊して元気になったため杖がいらなくなり、その杖をお地蔵さんに奉納したというストーリーが残っているんです。

観光協会では、電動自転車を貸し出しており、気軽にサイクリングも楽しめますよ。長期滞在する方は、三徳山やその裏側にある小鹿渓(おしかけい)、トレッキングができる若杉山などにも、ぜひ足を伸ばしてみてほしいです。

三朝温泉観光協会/三朝温泉旅館協同組合 公式サイトはこちら

三朝温泉ならでは入浴アドバイザー「ラヂムリエ」とは?

国の登録有形文化財 木屋旅館 国の登録有形文化財 木屋旅館

日本遺産の構成文化財、国の登録有形文化財になっている「木屋旅館」。同旅館を営む御舩秀さんは、現代湯治推進協議会の代表も務めています。同協議会では、三朝温泉の入浴アドバイスザーを「ラヂムリエ(ラヂウムとソムリエを組み合わせた造語)」として認定。一人ひとりに合った入浴方法(浸かる・吸う・飲む)を提案してくれます。

ラドン泉の効果効能を最大限に享受するために

御舩さんに、三朝温泉ならではのラヂムリエの役割を伺いました。

御舩さん:ラヂムリエは三朝温泉の独自資格で、役割はお客様に三朝温泉に安心安全に入っていただくためのアドバイスをすること、そして三朝温泉のラドン泉の効能効果(微弱放射能によるホルミシス効果など)をきちんとお伝えすることです。「浸かって良し、吸って良し、飲んで良し」、この三つのやり方をきちんとお話します。「浸かる」「吸う」「飲む」とでは、ラドンが体内に入る量がまったく異なるからです。

また、三朝温泉の各温泉施設についてもしっかりと解説できますし、その方に合った入浴法も提案しています。現代では、病院にかかるほどではない「未病」と呼ばれる方もたくさんいらっしゃいますよね。もちろん、具体的な症状があり三朝温泉に湯治にいらっしゃる方もいますが、現代病の予備軍の方にも、ぜひラドン泉を体感していただきたいです。
美肌効果にも期待ができるラドン泉は、女性からの人気も高いといいます 美肌効果にも期待ができるラドン泉は、女性からの人気も高いといいます
木屋旅館の浴室には、飲泉用の設備も整っています。 木屋旅館の浴室には、飲泉用の設備も整っています。
レトロな雰囲気を残す、木屋旅館内の様子 レトロな雰囲気を残す、木屋旅館内の様子
住所 〒682-0123 鳥取県東伯郡三朝町三朝895

木屋旅館 公式サイトはこちら

三朝温泉を味わい尽くす!必ず訪れたい「六感治癒」スポット
【三徳山エリア】

・白狼堂 (「味」「香」を癒す)
スイーツショップ「Hakuroudo-白狼堂-」 スイーツショップ「Hakuroudo-白狼堂-」
投入堂にちなんだ「なげいれどーなつ」 投入堂にちなんだ「なげいれどーなつ」
三徳山三佛寺へ行った後に立ち寄りたいのが、スイーツショップ「Hakuroudo-白狼堂-」。投入堂にちなんだ「なげいれどーなつ」には、地元の三朝神倉大豆が使われています。
 
住所 〒682-0132 鳥取県東伯郡三朝町三徳989-3

白狼堂 公式サイトはこちら

【温泉街エリア】

・天然ラドン熱気温泉 すーはー温泉(「香」「心」を癒す)
天然ラドン熱気温泉 すーはー温泉 天然ラドン熱気温泉 すーはー温泉
天然ラドン熱気温泉 すーはー温泉
ラドン泉を「吸って吐く(すーはーする)」ことで、その効能を得ることができる施設(予約制)。4名まで利用できる地下高濃度熱気浴室「不老庵」に加え、女性専用の熱気浴室「恋泉庵」、乾式熱気浴室「ヴァポリウム」があります。
住所 〒682-0123 鳥取県東伯郡三朝町大字三朝939-1

天然ラドン熱氣浴泉 すーはー温泉 公式サイトはこちら

・バイオリン美術館(「聴」「触」を癒す)
 
バイオリンの試奏体験も人気 バイオリンの試奏体験も人気
ホールでは定期的に演奏会も行われる ホールでは定期的に演奏会も行われる
日本でも珍しい、バイオリンの製造工程を展示した美術館。2階はホールになっており、定期的に演奏会も行われています。バイオリン制作体験コース(2日〜)や、バイオリンの試奏体験も人気があります。
住所 〒682-0123 鳥取県東伯郡三朝町三朝199-1

三朝バイオリン美術館 公式サイトはこちら

・射的場「泉娯楽場」(「聴」「観」を癒す)
温泉街にある泉娯楽場 温泉街にある泉娯楽場
昭和レトロな雰囲気を味わうことができます 昭和時代へタイムスリップ
温泉街の中にある、昭和レトロな雰囲気を味わえる射的場。射的に加え、スマートボールや古いパチンコ台が設置されており、昭和にタイムスリップしたかのような感覚を味わえます。
住所 鳥取県東伯郡三朝温泉町大字三朝912-2

泉娯楽場 公式サイトはこちら

三徳山へ登り六根を清め、深い繋がりのある三朝温泉で六感を癒す。自然の恵みを存分に味わえる三朝町で、日本遺産を全身で体感してみてはいかがでしょうか。
 
【三朝町へのアクセス】
東京から およそ2時間10分
飛行機→(1時間10分)→鳥取空港→連絡バス→(45分)→JR倉吉駅→三朝温泉
名古屋から およそ2時間50分
名古屋空港→(70分)→米子空港→JR米子駅→JR倉吉駅→三朝温泉
福岡から およそ2時間50分
福岡空港→(65分)→米子空港→JR米子駅→JR倉吉駅→三朝温泉

その他のルートと所要時間

【本稿で紹介した構成文化財】 三徳山
三徳山行者道
三佛寺 本堂
三佛寺 文殊堂
三佛寺 鐘楼堂
三佛寺 奥院 投入堂
三朝温泉
 ┗株湯
 ┗木屋旅館

ストーリーページはこちら

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