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2026.10.05

特集

日本遺産巡り#57◆海底火山が生んだ奇跡の石―
人々がほり、使いこなしてきた大谷石の街・宇都宮をめぐる旅

広大な凝灰岩の地層

約1500万年前の海底火山の噴火によって、広大な凝灰岩(ぎょうかいがん)の地層が形成された栃木県宇都宮市の大谷地域。この地で産出される「大谷石(おおやいし)」は、柔らかく加工しやすい性質から、古くは暮らしの礎として、近代以降は建築資材として、人々の営みに寄り添ってきました。

江戸時代に始まった採掘は、石を「ほる(掘る・彫る)」文化を築き上げ、最盛期には年間89万トンを出荷する一大産業へと発展。宇都宮の街では、その石を自在に「使いこなす」独自の建築文化が根付きました。

悠久の時を経て、人々の営みとともに育まれてきた大谷石の文化を肌で感じるため、宇都宮の地を訪れました。

1500万年前の火山噴火が生み出した奇岩群:大谷地域の歴史

宇都宮市の北西部に位置する大谷地域。巨大な岩壁がそそり立ち、さながら古代遺跡のような景観が広がるこの地は、今も日本を代表する石材 大谷石の産地として知られています。

大谷石の歴史は、はるか1500万年前に遡ります。海底火山の噴火によって火山灰や砂礫が海底に堆積し、長い年月をかけて固まることで、凝灰岩の広大な地層が形成されました。地殻変動によって隆起し、地上に現れた地層が、現在私たちが目にする大谷石の原石です。

むき出しになっている岩壁 むき出しになっている岩壁

大谷石は、肉眼では見えない小さな穴がたくさんある「多孔質(たこうしつ)」で、柔らかく加工しやすい特性を持っています。さらに、耐火性や蓄熱性、吸湿性にも優れていることから、古くから人々の暮らしに寄り添ってきました。縄文時代には、岩山の洞穴を住居として利用していたことも分かっています。

歴史と文化を現代に伝える大谷観光周遊拠点施設:大谷コネクト

旧大谷公会堂とビジターセンター 左)国登録有形文化財にも認定されている旧大谷公会堂、右)ビジターセンター(大谷観光周遊拠点施設 大谷コネクト内)

大谷石のルーツを知る上で、まず立ち寄ったのが大谷観光周遊拠点施設、通称「大谷コネクト」。大谷石文化の全体像を把握し、周辺観光のアドバイスを受けられる旅の拠点です。
暮らしに根付いた石の文化と、世界が認めた大谷石のルーツ
大谷コネクトのビジターセンターは、大谷地域の成り立ちから構成文化財の場所までを整理できる、いわば旅の“道標”のような場所。棚に並ぶパンフレットや地図をもとに、見どころを確認しておくのもおすすめです。

ここでお話を伺ったのは、(一社)うつのみやシティガイド協会理事長の藤本由利子さん。大谷石が地域の人々の暮らしにどのように根付いてきたのか、そして、この石がなぜ全国的に知られるようになったのかを教えてくれました。

ビジターセンター(大谷観光周遊拠点施設 大谷コネクト内) ビジターセンター(大谷観光周遊拠点施設 大谷コネクト内)

(一社)うつのみやシティガイド協会理事長 藤本 由利子さん (一社)うつのみやシティガイド協会理事長 藤本由利子さん

藤本さん:大谷石は、この地域の方々にとっては“生業”であり、“生活”そのものでした。かつては農業の傍ら、冬の農閑期に石を掘るのが当たり前の光景で、そうして掘り出された石は、塀や蔵、家の土台として、暮らしの中に自然に溶け込んでいきました。とりわけ、火に強い特性は、木造建築が多かった時代には何より重宝されたようで、火事から大切な家財を守るために蔵が建てられ、屋根まで大谷石で葺いた家屋もあったほどです。

芦沼集落 芦沼集落

大谷地域に住む方たちから「生活の石」として親しまれていた大谷石が、世界の建築史に名を刻むきっかけとなったのは、建築界の巨匠フランク・ロイド・ライトによる旧帝国ホテルへの採用でした。

藤本さん:ライトと大谷石の出会いは、偶然訪れます。国会議事堂に使用する石材を選定するために全国から石の見本が集められた際、ライトの目に留まったのが大谷石だったのです。採掘地から東京へのアクセスが良く、運搬コストが抑えられる利便性もありましたが、何よりの決め手は加工のしやすさにあったといいます。
昭和の名建築が、人々が集う交流のハブに
ビジターセンターに隣接する「旧大谷公会堂」は、1929年に建設された昭和の名建築で、道路拡張工事に伴い一度は解体の危機に瀕しましたが、歴史的価値が認められ、現在の場所へ移築・復元されました。かつて地元の人々の集いの場であった公会堂は、時を経て新たな役割を担い、地域の中心として再び活気に満ち溢れています。

旧大谷公会堂(大谷観光周遊拠点施設:大谷コネクト内) 旧大谷公会堂(大谷観光周遊拠点施設:大谷コネクト内)

旧大谷公会堂の外壁を飾る大谷石の装飾 旧大谷公会堂の外壁を飾る大谷石の装飾

藤本さん:大谷石を用いた外壁はもちろん、内部の山小屋風の構造も正確に復元しています。何より素晴らしいのは、貴重な建物を文化財としてただ保存するのではなく、「公民館として、皆さんにどんどん使ってもらい、地域活性化に役立てよう」という発想です。今では音楽イベントやマルシェ、映画の上映会なども開かれ、地域の方と観光客が自然に交流する、まさに“コネクト”する場所になっています。旧大谷公会堂の正面上部を飾る4本の付け柱(ピラスター)には、ロマネスク建築を思わせる緻密な幾何学文様が彫り込まれています。繊細な装飾ができるのは、柔らかく、優れた加工性がある大谷石だからこそです。
訪れるたびに新しい発見がある。シティガイドから見る大谷の奥深い魅力

大谷地域の大谷石岩壁 大谷地域の大谷石岩壁

1500万年前の海底から隆起した地層は、自然の力だけで形づくられた、まさに大地のアートです。藤本さんは、大谷石の魅力についてこう話します。

藤本さん:市街地で目にする、きれいに整えられた大谷石も素敵ですが、ここでは大地から切り出される前の力強い“原石そのもの”を見ることができます。無機質なはずの岩肌が、四季の移ろいや太陽の傾きによって柔らかな温もりを帯びたり、ときには荘厳な静寂を纏ったり。刻一刻と表情を変える様子は、何度目にしても見飽きることがありません。ぜひ、現地で直接その魅力を体感していただきたいです。
 
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大谷の歴史や文化をより深く味わいたいなら、専門のシティガイドに案内をお願いするのがおすすめです。藤本さんも所属する「(一社)うつのみやシティガイド協会」では、希望の時間や興味に合わせてコースを組み立て、まち歩きをサポートしてくれます。

【大谷コネクト】
 
所在地 栃木県宇都宮市大谷町1271-2
TEL 028-652-4800
開館時間 9:00〜17:00
定休日 毎月第3火曜日 12/29~1/3
ガイド申込 (一社)うつのみやシティガイド協会にご依頼の際は、ご利用日の10日前までに電話(080-7754-1965)、またはFAX(028-645-3041)でお申し込みください。利用料はガイド1名につき半日1,000円です。

いざ巨大な地下迷宮へ。
大谷資料館でたどる採掘の歴史と石工の営み

続いて、大谷石がどのように採掘されたのかを知るために、物語の“源”へと潜ってみましょう。向かったのは大谷資料館。地下採石場の跡地を利用したこの場所は、足を踏み入れるとまるで巨大な地下神殿のような空間が広がっています。

大谷資料館(カネイリヤマ採石場跡地) 大谷資料館(カネイリヤマ採石場跡地)

大谷資料館は、1919年(大正8年)から1986年(昭和61年)までの約70年をかけて地下に掘り進められた採石場跡。広さは約2万平方メートル、最深部は地下30m(非公開エリアは60m)にも達します。

坑内の気温は年間を通して8℃前後と安定しており、一歩足を踏み入れれば、外の喧騒を忘れるほど静謐でひんやりとした空気に包まれます。独特な涼しさを求めて夏には多くの人々が訪れる、大谷を代表するスポットです。
石工たちの息遣いが刻まれた空間
薄暗い空間に歩を進めると、壁面に残る無数の直線的な掘り跡が目に入ります。手掘り時代の採掘は、地道で過酷なものだったそう。「六十石(ろくとう)」と呼ばれる規格の石を一本切り出すために、石工が振るったツルハシの数は実に4,000回。気の遠くなるような時間をかけ、一つひとつ人の手で石を切り出していたのです。

大谷資料館(カネイリヤマ採石場跡地) 大谷資料館(カネイリヤマ採石場跡地)

壁に残る階段の跡 壁に残る階段の跡

壁の上方には、垂直な岩肌に四角い跡が点々と刻まれています。これは、切り出した石を運び出す際、木を打ち込んで足場にしていた階段の跡です。命綱もない時代、石工たちは150kgもの重い石を背負って一歩ずつ壁を上り、外の世界へと運び出していました。

大谷石の採掘に使われていた道具 大谷石の採掘に使われていた道具

石の運び出しに使われた階段 石の運び出しに使われた階段

大谷資料館入口横にある展示エリアには、採掘の歴史や工程を解説するパネル、そして実際に使われていた道具類が並んでいます。暗く広大な地下空間を歩いたあとにこれらの資料に触れると、先ほどまで目にしていた巨大な空間が、いかに多くの人々の営みによって築かれたものであるかが、より深く実感できます。
現代では文化発信の舞台へ

大谷資料館(カネイリヤマ採石場跡地) 大谷資料館(カネイリヤマ採石場跡地)

大谷資料館の唯一無二の空間は、時代とともにその役割を柔軟に変えてきました。戦時中は軍の秘密工場として、戦後は政府米の貯蔵庫として利用された過去を持ちます。そして現代、この場所は新たな文化の発信拠点として生まれ変わりました。

地下空間ならではの独特な雰囲気と優れた音響効果は、多くのクリエイターを魅了してやみません。映画やミュージックビデオのロケ地として数多くの作品に登場するほか、コンサートや演劇、アート作品の展示会場としても広く活用されています。

かつての厳しい労働の場であった産業遺産が、今では現代の表現と融合し、訪れる人々に新たな感動を届ける舞台となっているのです。

【大谷資料館】
所在地 栃木県宇都宮市大谷町909
TEL 028-652-1232
開館時間 [4月~11月] 9:00~17:00 (最終入館16:30) / [12月~3月] 9:30~16:30 (最終入館16:00)
休館日 [4月~11月] 無休 / [12月~3月] 火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月26日~1月3日)、その他不定休
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大谷石の新しい表情に出会う

ROCKSIDE MARKET ROCKSIDE MARKET

大谷資料館の隣にあるのは、大谷石の新しい魅力を発見できるセレクトショップ「ROCKSIDE MARKET」。店内には、大谷石の柔らかな質感を活かしたスタイリッシュなコースターや、香りを優しく広げるアロマストーンなど、日常に溶け込むオリジナルグッズが並びます。

併設されたカフェでは、窓の外に広がる採石場跡のダイナミックな景観を眺めながら、ゆったりとした時間を過ごせます。

ROCKSIDE MARKETで販売されているグッズ ROCKSIDE MARKETで販売されているグッズ

ROCKSIDE MARKETで販売されているグッズ

【ROCKSIDE MARKET】
TEL 028-688-8604
開館時間 9:30-17:00 [ラストオーダー 16:30]
休館日 大谷資料館の休日と同じ
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170年にわたり大谷石と向き合う石の匠、カネホン採石場

資料館で辿った“かつての記憶”ではなく、今まさに石が切り出されている“現在の息吹”に触れられるのが「カネホン採石場」です。1854年(安政元年)創業の有限会社カネホンは、大谷石とともに170年近い時間を重ねてきた採石会社。いわば「大谷石文化」の変遷を、地域の暮らしのすぐそばで見てきた存在です。

ここでは、有限会社KANEHON代表取締役 髙橋 卓さんに大谷石の歴史と今、そして未来への思いを伺いました。

カネホン採石場 カネホン採石場

有限会社KANEHON代表取締役 髙橋 卓さん 有限会社KANEHON代表取締役 髙橋 卓さん

時代のニーズに応え、進化し続ける石の文化
髙橋さん:昔は“積んで使う”のが中心だった大谷石ですが、ここ20年ほどで使われ方が大きく変わりました。今主流になってきているのは、石を薄くスライスして、壁に“貼る”使い方です。昔は手作業だったため限界がありましたが、技術の進歩により、安定して薄く加工できるようになったんです。住宅だけでなく、店舗の壁や内装に使われることも増えてきました。

採掘によってできた壁 採掘によってできた壁

採掘場の様子 採掘場の様子

髙橋さん:大谷石の魅力は、光を反射するような硬い美しさではなく、空間にそっと馴染んで、包み込むような温かみを感じさせてくれるところにあります。また、湿度を調整したり、気になる臭いを抑えたりと、暮らしに役立つ力も備えています。遠赤外線を放出することも分かっており、活用の幅はさらに広がっています。大谷石は、高いポテンシャルを秘めた石なんです。
青空の下に広がる巨大な壁。安全を求めた「露天掘り」への決断
大谷石の採掘には、大きく分けて二つの手法があります。一つは、大谷資料館で見られるような、地下深くへと掘り進める「坑内(こうない)掘り」。そしてもう一つが、カネホン採石場が採用している、山を上から切り崩していく「露天(ろてん)掘り」です。

大谷資料館で展示されている坑内掘りの様子 大谷資料館で展示されている坑内掘りの様子

カネホン採石場の露天掘り カネホン採石場の露天掘り

髙橋さん:坑内掘りは、地下に10m角ほどの縦穴を掘り進め、良質な石の層に当たったところで横へと広げていく手法です。雨風を凌げる全天候型の作業ができる一方で、地上を支えるための柱を残さなければならず、採掘量が全体の半分に限られてしまいます。何より、常に落盤の危険と隣り合わせという厳しさがありました。

カネホン採掘場の様子 カネホン採掘場の様子

昭和49年、先代である現会長は、あえて「地下の現場」から離れ、膨大なコストをかけて「地上の現場(露天掘り)」へと切り替える決断を下したといいます。

髙橋さん:先代は「いつまでも危険と向かい合う現場では、将来的に人材を確保できなくなる」と予見していました。露天掘りを始めるには、坑内掘りの数倍近い初期投資が必要でしたが、働く人の安全と未来を第一に考えたんです。空が見える露天掘りなら、落盤の心配はありません。その代わり、夏は暑く、冬は凍える寒さで、雨が降れば仕事にならないこともあります。天候の厳しさと向き合いながら、今も巨大な岩壁を切り出し続けています。
五感で楽しむ!開かれた採石場で未来へつなぐ
カネホン採石場では、観光施設として,子どもから大人まで楽しめる多彩なアクティビティが用意されています。

髙橋さん:大谷石を単なる知識としてではなく、若い世代や子どもたちに肌で感じてほしいと考えました。最近では、社員のアイデアから生まれたピザ窯や、私自身の経験から開発したサウナなど、石の新しい可能性にも挑戦しています。

サウナ サウナ

ピザ窯 ピザ窯

最盛期に100軒以上あった採掘業者は、現在はわずか4軒ほどに減少。深く掘れば掘るほどコストも危険性も増していく厳しい現実に、産地全体が直面しています。

髙橋さん:大谷石は掘ればなくなる枯渇資源です。だからこそ、ただ切り出すだけでなく、素材の素晴らしさを活かした“新しい価値”を創り出さなければなりません。例えば、加工で出る粉を活用する方法など、素材の魅力を余すことなく使い切る道を見つけていきたいと考えています。唯一無二の価値を絶やさないよう、新しい可能性を一つひとつ、形にしていきたいですね。

【カネホン採石場】
所在地 栃木県宇都宮市大谷町209
TEL 028-678-8802
営業時間 土曜日、日曜日、祝日の 10:00~15:00
見学・アクティビティ 土日祝日のみ(要予約、詳細は公式サイトをご確認ください)

カネホン採石場の公式サイトはこちら

市街地で大谷石を「使いこなす」文化に触れる

左)宇都宮市 魅力創造部 観光MICE推進課の尾津帆南さん、右)文化都市推進課 文化財保存活用グループの斎藤美南海さん 左)宇都宮市 魅力創造部 観光MICE推進課の尾津帆南さん、右)文化都市推進課 文化財保存活用グループの斎藤美南海さん

大谷地域で石を「ほる」文化の壮大さに触れた後は、宇都宮の市街地へ戻りましょう。掘り出された大谷石を巧みに「使いこなす」文化が、街の景観として深く根付いているのが分かるはずです。

ここからは、宇都宮市 魅力創造部 観光MICE推進課の尾津帆南さんと、文化都市推進課 文化財保存活用グループの斎藤美南海さんにご案内いただきました。
宇都宮のシンボル・二荒山神社の石垣
まず訪れたいのが、宇都宮のシンボルとして市民に親しまれる「二荒山神社」。階段を上った先の“山の上”にあり、街を見守るように構えています。

尾津さん:二荒山神社が建っているのは臼ヶ峰と呼ばれる場所で、もともと“小寺峰”と“臼ヶ峰”の二峰を持った小高い荒山だったといわれています。江戸時代に街の割替えが行われて山が二分され、小寺峰は削られて、今は臼ヶ峰のみが残っているんです。街の中心に“山の記憶”が残っているのが面白いところですよね。

二荒山神社 二荒山神社

斎藤さん:二荒山神社の歴史はとても古く、平安時代の838年(承和5年)には、すでにこの場所にあったと伝えられています。当時の記録にも残っており、栃木県内では唯一、特に格式の高い神社を指す「名神大社(みょうじんたいしゃ)」として格別の崇敬を集めてきました。宇都宮はこの神社を中心に門前町として始まり、江戸時代には城下町へと発展を遂げたといいます。まさに、この街の歴史の“核”といえる聖域なんです。

二荒山神社へ続く階段 二荒山神社へ続く階段

二荒山神社の石垣 二荒山神社の石垣

長く続く石段を上っていくと、その両脇に堂々たる石垣が現れます。

斎藤さん:この石垣には大谷石が使用されていて、江戸時代に組まれたものです。戦火を免れた貴重な文化財であり、宇都宮の守り神の土台を大谷石が支えてきた歴史を物語っています。参拝の際は、本殿へ向かう途中でぜひ左右の石の表情も見比べてみてください。切り出しや積み方に、石工の仕事が見えてきます。

尾津さん:お正月や七五三で参拝する方も多く、市民にとっては“日常の中の特別な場所”です。近年では鳥居の広場で3×3バスケットボールの世界大会が開かれるなど、歴史と現代の賑わいが交差する拠点にもなっています。

【二荒山神社】
所在地 栃木県宇都宮市馬場通り1-1-1
荘厳な美しさを纏う、カトリック松が峰教会

カトリック松が峰教会 カトリック松が峰教会

二荒山神社から徒歩13分ほど歩くと、街並みの中に突如、異国情緒あふれる美しい教会が現れます。

斎藤さん:カトリック松が峰教会は、1932年(昭和7年)に竣工した教会で、大谷石建築としては国内最大級の規模を誇ります。注目してほしいのは、天に伸びる二つの塔(双塔)。国内でも、とても珍しい造りなんです。

尾津さん:外壁に使われている大谷石は、あのフランク・ロイド・ライトが旧帝国ホテルのために石を切り出したのと同じ山から採石されたと言われています。柔らかい大谷石だからこそできる、繊細な彫刻が随所に施されている点にも注目してみてください。

外壁に施された装飾 外壁に施された装飾

外壁に施された装飾

教会の裏手には、職人たちの想いが込められた可愛らしいカエルの石像があります。「無事に帰る」の願いが込められたカエルの石像は、危険と隣り合わせだった採石の歴史を静かに物語っています。

工芸品の「無事カエル」 工芸品の「無事カエル」

石蔵をリノベーション。歴史と現代が交差するレストランへ
カトリック松が峰教会の目の前にある「ダイニング蔵 おしゃらく」は、築70年の石蔵をリノベーションした人気のレストラン。教会の荘厳な雰囲気とはまた違う、大谷石の“暮らしに近い温かみ”を感じられる場所です。

ダイニング蔵 おしゃらく ダイニング蔵 おしゃらく

斎藤さん:ここは元々、市町村や社会福祉法人によって運営されていた公益質屋の石蔵だったんです。歴史ある石蔵を壊さずに、現代の人が集う場所にしようという市の取り組みで、素敵な空間に生まれ変わりました。店内に入ると、石蔵ならではの重厚な壁の質感を間近に感じられます。彩り豊かな御膳が人気で、ランチタイムはいつも賑わっています。大谷石の歴史に触れた後に訪れると、特別な時間を過ごせますよ。

大谷石を身近に感じる内装 大谷石を身近に感じる内装

大谷石を身近に感じる内装

【ダイニング蔵 おしゃらく】
所在地 栃木県宇都宮市宮園町8-9
営業時間 ランチ 11:30~14:30
ディナー 火~木 17:30~21:00/金、土 17:00~22:00
定休日 日曜日夜・月曜日
掘り出された石が、人々の手によって建築となり、街の風景となり、そして文化を育む。宇都宮を旅すれば、大谷石が単なる岩石ではなく、人々の暮らしに寄り添い、共に時を重ねてきたパートナーであることが実感できるはずです。太古の記憶を宿す石の物語を探しに、宇都宮の地を訪れてみてはいかがでしょうか。
【この記事で紹介した構成文化財】 大谷の奇岩群(御止山)
カネホン採石場(高橋佑知商店)
カネイリヤマ採石場跡地(大谷資料館)
旧大谷公会堂
二荒山神社の石垣
カトリック松が峰教会
無事カエル
ダイニング蔵 おしゃらく

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