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鞆・沼名前神社能舞台 ~鏡板・松図の復原~

  • 広島県

令和7年5月6日(火)に福山市鞆町にある沼名前神社能舞台の鏡板除幕式がありました!沼名前神社能舞台は、かつて豊臣秀吉が舞った可能性があると伝えられる能舞台です。京都伏見城からこの地にきて400年近い年月の間、鞆の人達により誇りと自信をもって大切にされてきた能舞台であり、日本遺産「鞆の浦」の構成文化財にもなっています。

近年、沼名前神社能舞台の奥に位置する鏡板の松図は、顔料の剥落や経年劣化で肉眼ではほぼ確認できない状態となっていました。鏡板の復原を行うため、斜光ライトによる痕跡調査や蛍光X線による顔料調査を行った結果、肉眼では見えない松・竹の絵様や顔料を確認しました。また、痕跡から、後世の補筆がほとんど行われていない事もわかりました。類例調査や資料調査では狩野派の描き方に共通点が多いこともわかってきました。これらの調査や白描図の作成など、完成まで数年の年月を経てこの度見事に当時の鏡板が復原されました。 

この鏡板は松と竹が同一平面に描かれた珍しい構図が特徴です。根元から力強く伸びる老松を中央に、近景にある竹が向かって左の同じ平面に描かれています。一般的な能舞台の鏡板とは少し異なる配置です。能舞台の鏡板に描かれる松は、奈良の春日大社にある「影向(ようごう)の松」を元にしているとも言われています。神が降りてくる神籬(ひもろぎ)が舞台の鏡板に反射した様子であり、能を奉納する舞手は神様に向かっていることを表しています。古来より神聖な木とされてきた老松と竹ですが、松を描くことで、舞台を神聖な空間にし、竹の生命力と成長の象徴が加わります。

能舞台の鏡板・橋掛といった舞台装置に、能面・装束といった装具を纏い、笛や小鼓・太鼓・囃子の音色に合わせて、能楽師のわずかな動きで表現する“能楽”は、神々に奉納される神事であり、日本の総合芸術として2008年にユネスコの世界無形文化遺産に登録されています。

福山では、初代藩主水野勝成が能を愛した伝統が今につながっており、市内で能が今も演じられています。17世紀以前に遡る能舞台は現在全国に4舞台しかありません。(京都東本願寺2能舞台、厳島神社能舞台、鞆町沼名前神社能舞台)ぜひ機会がありましたら、鞆にある希少な「沼名前神社能舞台」で能の世界を楽しんで下さい!

★沼名前神社能舞台について (福山市HP・えっと福山)
https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/soshiki/bunka/64291.html  
https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/miryoku2023/288955.html
 

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