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STORY #031

森に育まれ,森を育んだ人々の暮らしとこころ
~美林連なる造林発祥の地“吉野”~

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STORY

我が国造林発祥の地である奈良県吉野地域には、
約500年にわたり培われた造林技術により育まれた
重厚な深緑の絨毯の如き日本一の人工の森と、
森に暮らす人々が神仏坐す地として守り続ける
野趣溢れる天然の森が、
訪れる人々を圧倒する景観で迎えてくれる。
ここに暮らす人々が、それらの森を長きに亘って育み、
育まれる中で作り上げた
食や暮らしの文化が今に伝わり、
訪れる者はそれを体感して楽しむことができる。

詳細を表示 構成文化財一覧 詳細 [PDF 41M]

構成文化財一覧

  • 文化財の名称

    指定等の状況

    文化財の所在地
  • 金峯山寺本堂

    国宝

  • 本善寺

    国登録

  • 願行寺

    町指定

  • 黒滝村旧役場庁舎

    県指定

  • 石仏

    未指定

    黒滝村
  • みたらい渓谷

    未指定

  • 洞川湧水群

    未指定

  • 前鬼のトチノキ巨樹群

    県天然記念物

  • 池神社と親子杉・夫婦杉

    村天然記念物

  • シシンラン群落

    国天然記念物

  • 吉野川源流−水源地の森

    未指定

  • 三之公川トガサワラ原生林

    国天然記念物

  • 土倉翁屋敷跡

    村指定(歴史記念物)

  • 「土倉翁造林頌徳記念」岸壁碑文

    村指定(歴史記念物)

  • 下多古村有林

    未指定

  • 吉野川の開削跡

    未指定

    吉野町・川上村
  • 吉野の天然の森と人工林

    未指定

    全町村
  • 国栖奏

    県無形民俗

  • 龍門寺跡と龍門滝

    県史跡

    吉野町
  • 吉野水分神社

    重文

  • 丹生の太鼓踊り

    県無形民俗

  • 丹生川上神社下社

    未指定

  • フロウの滝

    未指定

  • 河分神社

    未指定

  • 高算堂

    未指定

  • 鳳閣寺

    未指定

  • 天河大辯財天社

    未指定

  • 大峰山寺

    重文

  • 龍泉寺

    未指定

  • 栃尾観音堂

    未指定

  • 河合の弓引き行事(八日薬師)

    県無形民俗

    上北山村
  • 笙の窟・銅造不動明王像

    史跡・県指定

  • 不洞窟鍾乳洞

    県天然記念物

  • 丹生川上神社上社

    未指定

  • 七滝八壺

    未指定

  • 丹生川上神社中社

    村指定

  • 木霊神社

    未指定

  • 木津川の祈祷念仏

    県無形民俗

  • 高見山

    未指定

  • 山の神の信仰

    未指定

    全町村
  • 吉野山の街並み

    未指定

  • 洞川温泉街

    未指定

  • 前鬼集落跡

    未指定

  • 吉野建

    未指定

    全町村
  • 吉野の手漉き和紙

    未指定

    吉野町
  • 下市の三宝制作技術

    未指定

    下市町
  • 下市の神酒の口制作技術

    未指定

    下市町
  • 吉野の樽丸制作技術

    国無形民俗

    全町村
  • 割箸制作技術

    未指定

    全町村
  • 陀羅尼助

    未指定

    吉野町・天川村
  • 黒滝白きゅうり

    未指定

    黒滝村
  • いもぼた

    未指定

    天川村
  • 朴の葉寿司

    未指定

    下市町・黒滝村・天川村・東吉野村
  • 春まなのめはり寿司

    未指定

    下北山村
  • 栃餅

    未指定

    上北山村
  • 粽とでんがら

    未指定

    川上村・東吉野村
  • 吉野葛

    未指定

    全町村
  • 柿の葉寿司

    未指定

    全町村

ACCESS

  • 鉄道
    • 近鉄あべの橋駅(吉野行特急)〜近鉄大和上市駅(約1時間15分)
    • JR天王寺駅(大和路線)〜JR高田駅(和歌山線)〜吉野口駅(近鉄吉野線)〜近鉄大和上市駅(約1時間30分)
    • 近鉄京都駅(近鉄京都線)〜橿原神宮前駅(近鉄吉野線)〜近鉄大和上市駅(特急約1時間30分)
    • 近鉄奈良駅(近鉄奈良線)〜大和西大寺駅(近鉄橿原線)〜橿原神宮前駅(近鉄吉野線)〜近鉄大和上市駅(特急約1時間5分)
    • 近鉄宇治山田駅・伊勢市駅(近鉄山田線)〜大和八木駅(近鉄橿原線)〜橿原神宮前駅(近鉄吉野線)〜近鉄大和上市駅(特急約2時間)
    • 高野山駅(南海高野山ケーブル)〜極楽橋駅(南海高野線)〜JR橋本駅(和歌山線)〜吉野口駅(近鉄吉野線)〜近鉄大和上市駅(約1時間50分)
    • JR和歌山駅(和歌山線)〜吉野口駅(近鉄吉野線)〜近鉄大和上市駅(約2時間20分)
    • 天川方面へは大淀経由でR308へ(自動車)
    • 大阪(西名阪自動車道)〜郡山IC(国道24号線)〜橿原(国道169号線)〜吉野町(約2時間)
    • 大阪(阪和自動車道)〜美原JCT(南阪奈道路)〜葛城IC(国道165号線(高田バイパス))〜橿原(国道169号線)〜吉野町(約1時間)
    • 名古屋(東名阪自動車道・名阪国道)〜針IC(国道369号線・370号線)〜吉野町(約3時間)

CONTACT

  • 吉野町 産業観光振興課
  • TEL:0746-32-3081
    FAX:0746-32-8855
  • 吉野町 教育委員会事務局
  • TEL:0746-32-0190
    FAX:0746-32-8875
  • 下市町 総務課
  • TEL:0747-52-0001
    FAX:0747-54-5055
  • 黒滝村 企画政策課
  • TEL:00747-62-2031
    FAX:0747-62-2569
  • 天川村 地域政策課
  • TEL:0747-63-0321
    FAX:0747-63-0329
  • 下北山村 地域創生推進室
  • TEL:07468-6-0001
    FAX:07468‐6-0377
  • 上北山村 地域振興課
  • TEL:07468-2-0001
    FAX:07468-3-0265
  • 川上村 地域振興課
  • TEL:0746-52-0111
    FAX:0746-52-0345
  • 東吉野村 地域振興課
  • TEL:0746-42-0441
    FAX:0746-42-0446

STORY

森に育まれ,森を育んだ人々の暮らしとこころ

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天然の森から人工の森へ

金峯山寺本堂

奈良県南部の吉野地域に古代から広がっていた豊かな天然の森は、我が国屈指の多雨地帯であり、湿潤であるために多様な植物が密生していた。それ故に、そこで育つ木々が大径になるには他の地域より時間を要して、細やかな年輪と強靱な性質を持っていた。中世までは、そのような森の木を伐採することは、山や森に坐す神仏を祭祀する金峯山寺(きんぷせんじ)などの寺社を造営する必要に迫られた時に限られ、伐採しても自然の回復を待つことが常であった。

戦国期に至って、この地域の森と暮らしに大きな変化が訪れた。近畿各地で城郭や寺社の建築が増え、その用材として吉野の森林資源が注目されるようになった。それを効率的に運び出すために、蛇行する河川の岸壁を開削することで河川の流路改修が進められた。その結果、吉野の天然林は次々と伐採され、筏に組まれて運び出されていった。

このような流れの中で、伐採可能な天然林が徐々に減少したため、需要に応えるためには植林の必要に迫られるようになり、天然林が伐採されたあとに、建築材としてより価値の高い杉や桧が植えられるようになった。室町後期、川上村で初めて植林が行われたことが最古の記録であり、現に樹齢約400年の植林の森が川上村下多古(しもたこ)地区にある。

江戸中期になると、江戸などの大都市で灘や伊丹の酒の需要が高まり、その輸送用の樽の材料として吉野地方の木材の需要が増え、海上輸送をはじめとする長期の輸送にも耐えうるよう更に品質を上げるために、植林、育林方法に工夫がなされるようになった。植林は、他の地域では1ha当たり3千本から4千本の植え付けが一般的だが、吉野地域では1ha当たり1万本の苗を植え付ける「密植(みっしょく)」という方法がとられた。その後は、「多間伐(たかんばつ)」という方法がとられ、成長が悪い木を除伐しながら、木の生長に合わせて間伐を何度も繰り返す作業を行う。

そして、一般的には40年から50年とされている最終伐期を、吉野では80年から100年以上に引き延ばす「長伐期(ちょうばつき)」施業という独自の技術を創造した。その結果、木の外回りが真ん丸に近い真円で、まっすぐに育った木々は年輪幅がほぼ一定で密であるために強度が強く、色艶や香りの良い、どの地域の材よりも美しい杉桧の「吉野材」を生み出すこととなった。この優れた林業技術によって、この地域の山々には、等間隔に、且つ真っ直ぐに立ち並ぶ見事な人工の美林が作りあげられることとなった。

森に生きた人々のこころの証

しかし、吉野の人々は全ての山々を人工林に変えることはしなかった。人々は、山々を神仏と仰ぎ、その頂は神仏の頭であり、稜線伝いの道は神仏を巡る修行の道として、その周辺の天然の森には手を着けることなく守り続けた。

古代から人々は、神仏と仰ぐ森や山、そこから流れ出る水などの依り代として祠を設けて祀った。中には、平安時代以降、皇室や摂関家など貴顕の尊崇を受けることとなった吉野水分神社(よしのみくまりじんじゃ)や丹生川上神社(にうかわかみじんじゃ)、金峯山寺などように豪壮な寺社に発展したところもある。

山の神の信仰

また、人工林は、山の暮らしに富をもたらしてくれる有難い存在として、人々は山の神と仰ぎ、ささやかな祠を設けて、今もその祭事が各所で執り行われている。

森の資源を活かした生活文化

吉野建

吉野地方の多くは、急峻な地形が多く、宅地や田畑となる平地や緩斜面は極めて少なく、それ故に、石垣を積んで宅地や田畑を造り、あるいはまた、谷側を背にして斜面に張り付くような「吉野建(よしのだて)」と呼ばれる建築様式が形成された。

吉野町や下市町を除く村部には大規模な集落は少なく、緩斜面を削平した宅地に建つ民家や吉野建の民家が集まる小集落が谷間や山の中腹に点在し、大抵は山仕事を生業としてきた。しかし、中には山や森などを神仏と仰ぐ修験者が修行する前進基地として、その山の入り口に当たる稜線伝いの吉野町吉野山地区や、河川伝いの狭隘な地域である天川村洞川(どろがわ)地区のように旅館や山修行の手伝いを生業とする民家が混在する集落も形成された。

これらの集落での生活に必要な道具は、自ずと森の木々を利用した物が多い。下市町の三宝(さんぼう)などに代表される曲物(まげもの)が室町中期から作られたほか、江戸中期からは全国に先駆けて、黒滝村などでは樽丸(たるまる)という樽の側板材が盛んに生産され、全国生産量の殆どを明治期に至るまで吉野地方が担っていた。明治初期からは、樽丸生産や製材の過程ででる端材を利用した割箸作りが下市町で考案され、吉野町や下市町などで割箸が盛んに生産されるようになり、これもまた全国生産量の殆どを担っていた。

傾斜地や谷間に暮らすこの地域の人々は、米作に適さない土地柄であるが故に、森の恵みに食材を求め、あるいは環境に合う作物や加工食品をつくり、食生活を充たしてきた。また、保存効果や殺菌効果が高いとされる柿や朴(ほう)の葉などを利用した寿司を作る文化が形成されて、吉野川に沿った地域では柿の葉寿司、黒滝村・天川村・下市町などでは朴の葉寿司が今に伝わっている。下北山村や上北山村などは栃餅に代表される森の恵みに栄養源を求めることもあった。また、吉野地域で生産された葛は、「吉野葛」として料理に利用されるほか、葛湯、葛餅、葛菓子、葛きりなどの材料として全国にその名が知られる。

造林発祥の地“吉野”で車を走らせれば、人工の常緑の森が、重厚で一糸乱れぬ装いで広がるかと思えば、天然の森の色形ともに変化に富む景観が現れる。この地域の二つの壮大な美林連なる景観の中で、人々はその造林技術と育み育まれた森への祈りを今に伝え、訪れる者はその森とともに暮らす生活を実感することができる。


左:吉野の樽丸製作技術/右:柿の葉寿司

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