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STORY #079

神々や鬼たちが躍動する神話の世界
~石見地域で伝承される神楽~

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STORY

島根県西部、石見(いわみ)地域一円に根付く神楽(かぐら)は、
地域の伝統芸能でありながらも、時代の変化を受容し発展を続けてきた。
その厳かさと華やかさは、人の心を惹きつけて離さない。
神へささげる神楽を大切にしながら、現在は地域のイベントなどでも年間を通じて盛んに舞われ、
週末になればどこからか神楽囃子(かぐらばやし)が聞こえてくる。
老若男女、観る者を魅了する石見地域の神楽。
それは古来より地域とともに歩み発展してきた、石見人が世界に誇る宝なのだ。

詳細を表示 構成文化財一覧

構成文化財一覧

  • 文化財の名称

    指定等の状況

    文化財の所在地
  • 大元神楽(おおもとかぐら)

    国無形民俗

    江津市、川本町、美郷町、邑南町
  • 石見神楽(いわみかぐら)

    未指定(無形民俗)

    浜田市、益田市、大田市、江津市、川本町、美郷町、邑南町、津和野町、吉賀町
  • 神楽木彫面(かぐらきぼりめん)

    市有形民俗(邑南町は未指定)

    浜田市、益田市、邑南町
  • 石見神楽面(いわみかぐらめん)(長浜面(ながはまめん)・市木面(いちぎめん))

    未指定(工芸品)

    浜田市、大田市、江津市、邑南町
  • 長浜人形(ながはまにんぎょう)

    未指定(有形民俗)

    浜田市、江津市
  • 石州半紙(せきしゅうばんし)

    国無形・ユネスコ無形文化遺産

    浜田市
  • 石州和紙(せきしゅうわし)

    未指定(工芸品)

    浜田市
  • 井野神楽(いのかぐら)

    県無形民俗

    浜田市
  • 有福神楽(ありふくかぐら)

    県無形民俗

    浜田市
  • 紙本墨書神楽台本(しほんぼくしょかぐらだいほん)

    市有形(古文書)

    浜田市
  • 紙本墨書藤井宗雄著書(しほんぼくしょふじいむねおちょしょ)

    市有形(典籍)

    浜田市
  • 石見神楽蛇胴(いわみかぐらじゃどう)

    未指定(工芸品)

    浜田市、江津市
  • 石見神楽衣裳(いわみかぐらいしょう)(刺繍衣裳(ししゅういしょう))

    未指定(工芸品)

    浜田市、江津市
  • 烈女お初の碑(れつじょおはつのひ)

    未指定(建造物)

  • 鏡山(かがみやま)

    未指定(史跡)

  • 三葛神楽(みかずらかぐら)

    県無形民俗

    益田市
  • 久城神楽舞(くしろかぐらまい)

    市無形民俗

    益田市
  • 種神楽舞二題(たねかぐらまいにだい)

    市無形民俗

    益田市
  • 三谷神楽(みたにかぐら)

    市無形民俗

    益田市
  • 丸茂神楽(まるもかぐら)

    市無形民俗

    益田市
  • 匹見神楽(ひきみかぐら)

    市無形民俗

    益田市
  • 道川神楽(みちかわかぐら)

    市無形民俗

    益田市
  • 多根神楽(たねかぐら)

    市無形民俗

    大田市
  • 宅野子ども神楽(たくのこどもかぐら)

    市無形民俗

    大田市
  • 温泉津町重要伝統的建造物群保存地区(ゆのつちょうじゅうようでんとうてきけんぞうぶつぐんほぞんちく)

    国重伝建

  • 勝地半紙(かちじばんし)

    市無形民俗

    江津市
  • 八戸大元神社のムクの木(やとおおもとじんじゃのむくのき)

    市天然記念物

  • 大元神楽伝承館(おおもとかぐらでんしょうかん)

    未指定(有形民俗)

  • 市山八幡宮(いちやまはちまんぐう)

    未指定(建造物)

  • 甑(こしき)

    未指定(有形民俗)

  • 丸山城跡(まるやまじょうあと)

    県史跡

  • 都賀西神楽(つがにしかぐら)

    町無形民俗

    美郷町
  • 都神楽(みやこかぐら)

    町無形民俗

    美郷町
  • オロチカツラ

    県天然記念物

  • 鏝絵(こてえ)

    未指定(工芸品)

    美郷町
  • 蟠龍峡(ばんりゅうきょう)

    未指定(名勝)

  • 松尾山八幡宮(まつおやまはちまんぐう)

    未指定(建造物)

  • 榲尾神楽(すぎおかぐら)

    町無形民俗

    邑南町
  • 雪田神楽(ゆきたかぐら)

    町無形民俗

    邑南町
  • 御花の目録(おんはなのもくろく)

    未指定(古文書)

    邑南町
  • 年中祭祀之規式(ねんじゅうさいしのきしき)

    未指定(古文書)

    邑南町
  • 座敷神楽(ざしきかぐら)

    未指定(無形民俗)

    邑南町
  • 柳神楽(やなぎかぐら)

    県無形民俗

    津和野町
  • 柳神楽の面と衣装

    県有形民俗

    津和野町
  • 三渡八幡宮(みわたりはちまんぐう)

    県有形(建造物)

  • 太皷谷稲成神社(たいこだにいなりじんじゃ)

    未指定(建造物)

  • 抜月神楽(ぬくつきかぐら)

    県無形民俗

    吉賀町
  • 黒渕神楽(くろぶちかぐら)

    町無形民俗

    吉賀町
  • 白谷神楽(しらたにかぐら)

    町無形民俗

    吉賀町
  • 愛宕神社の社叢(あたごじんじゃのしゃそう)

    町天然記念物

  • 剣玉神社(けんぎょくじんじゃ)

    未指定(建造物)

  • 角寿司(かくずし)(箱寿司(はこずし)・押し寿司(おしずし))

    未指定(無形民俗)

    浜田市、益田市、大田市、江津市、川本町、美郷町、邑南町、津和野町、吉賀町

LOCATION

島根県(浜田市、益田市、大田市、江津市、川本町、美郷町、邑南町、津和野町、吉賀町)

ACCESS

浜田市
  • 鉄道
    • JR新山口駅(山陰本線特急)~JR浜田駅(約2時間10分)
    • JR松江駅(山陰本線特急)ーJR浜田駅(約1時間35分)
    • 広島市内~山陽道~中国道~浜田道~浜田市内(約1時間35分)
  • 飛行機
    • 萩・石見空港~乗り合いタクシー~JR浜田駅(約65分)
  • 高速バス
    • 大阪梅田~JR浜田駅(約6時間)
    • JR広島駅~JR浜田駅(約2時間20分)
益田市
  • 鉄道
    • JR新山口駅(山陰本線特急)~JR益田駅(約1時間30分)
    • JR松江駅(山陰本線特急)~JR益田駅(約2時間15分)
    • 広島市内~山陽道~中国道~戸河内~国道191号線~益田市内(約2時間10分)
    • 山口市内~国道9号線~益田市内(約1時間40分)
  • 飛行機
    • 萩・石見空港~連絡バス~JR益田駅(約40分)
  • 高速バス
    • 大阪梅田~JR益田駅(約7時間)
    • JR広島駅~JR益田駅(約3時間15分)
大田市
  • 鉄道
    • JR松江駅(山陰本線特急)~JR大田市駅(約1時間5分)
    • 広島市内~山陽道~中国道~浜田道~大朝~国道261号線~大田市内(約2時間10分)
    • 松江市内~山陰道・国道9号線~大田市内(約1時間10分)
  • 飛行機
    • 出雲空港~連絡バス~JR出雲駅(山陰本線)~JR大田市駅(約1時間45分)
  • 高速バス
    • JR広島駅~JR大田市駅(約3時間10分)
江津市
  • 鉄道
    • JR松江駅(山陰本線特急)~JR江津駅(約1時間20分)
    • JR益田駅(山陰本線特急)~JR江津駅(約50分)
    • 広島市内~山陽自動車道~中国自動車道~浜田自動車道~山陰自動車同(約1時間35分)
    • 広島市内~中国道~浜田道~山陰道~江津市内(約1時間40分)
  • 飛行機
    • 萩・石見空港~乗り合いタクシー~JR浜田駅(山陰本線)~JR江津駅(約1時間35分)
  • 高速バス
    • 大阪梅田~JR江津駅(約6時間30分)
川本町
    • 広島市内~山陽道~中国道~T浜田道~大朝IC~国道261号線~川本町内(約1時間30分)
  • 高速バス
    • JR広島駅~石見川本(約2時間10分)
  • バス
    • JR大田市駅~石見川本(約1時間10分)
    • JR江津駅~石見川本(約1時間15分)
美郷町
    • 広島市内~山陽道~中国道~T浜田道~大朝IC~国道261号線~美郷町内(約1時間50分)
  • バス
    • 石見川本~美郷町内(約30分)
邑南町
    • 中国自動車道~千代田JCT浜田自動車道~瑞穂IC(バス)~邑南町内(約1時間10分)
  • 高速バス
    • 大阪梅田~瑞穂IC(約5時間15分)
    • JR広島駅~瑞穂IC(約1時間40分)
津和野町
  • 鉄道
    • JR新山口駅(山陰本線特急)~JR津和野駅(約1時間5分)
    • 広島市内~山陽道~中国道~六日市IC~津和野町内(約2時間)
  • 飛行機
    • 萩石見空港~乗り合いタクシー~津和野駅(約50分)
    • 山口宇部空港~草江駅(宇部線)~新山口駅(山陰本線特急)~津和野駅(約2時間)
  • 高速バス
    • JR広島駅~日原(道の駅)(約2時間45分)
吉賀町
    • 広島市内~中国自動車道~六日市IC~吉賀町内(約1時間15分)
  • 高速バス
    • JR広島駅~六日市(約2時間)

CONTACT

STORY

神々や鬼たちが躍動する神話の世界

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神楽を伝え、舞とともに生きる石見人

島根県西部に位置する石見(いわみ)地域。人口が減少し、全体の人口がわずか19万人でありながらも、この地域には、神楽(かぐら)団体(社中(しゃちゅう)・保存会等)が130を超えて存在し、それぞれの地域で伝承されてきた舞を守り続けるとともに、時には新たな舞を創造しています。

なぜ、この地で暮らす者は、大人も子どもも神楽に魅せられ、若者は神楽を舞うためにこの地に残ることを選択するのか。ここ石見で伝わる神楽の魅力の一端をご紹介します。

大元神楽と石見地域の神楽の変遷

大元神楽の綱貫(つなぬき)の神事

古来より、石見地域一円に根付く大元(おおもと)信仰に基づき、数年に一度それぞれの村で周辺地域の神職が集まって執り行う「大元神楽(おおもとかぐら)」が行われており、これが現在の石見神楽(いわみかぐら)のルーツとなっています。

大元神楽は、近世以前から石見地域一帯に伝承されており、恵みを与えてくださる神(大元神(おおもとしん))への感謝を表す大元信仰から生まれたものといわれています。数年に一度の式年祭の日に行われ、斎場に大元神をお迎えし、神事(しんじ)、儀式舞(ぎしきまい)、神楽舞(かぐらまい)が夜を徹して行われます。中でも神がかりによる神のお告げを聞く託宣(たくせん)の神事があり、これが大元神楽の特徴でもあります。

明治期には、神職による神楽や託宣の神事を禁止する政府の命令が出され、大半の地域では託宣の神事は姿を消すことになりましたが、山間部の一部の地域では今でも神職による神事と神がかりが伝承されており、1979年に「大元神楽」として国の重要無形民俗文化財に指定されました。

現在では、かつての神職による舞が比較的忠実に受け継がれた、ゆるやかで優雅な舞を六調子(ろくちょうし)神楽、舞や奏楽の調子が速くなったものが八調子(はっちょうし)神楽と呼ばれています。

また、舞われている演目は30番を超え、素面に採り物(とりもの)で行われる「儀式舞」と、古代から中世にかけての神話・説話を基に神や鬼が躍動する「能舞(のうまい)(神楽能(かぐらのう))」と呼ばれるものに大きく分けられます。

神楽囃子の聞こえる里「石見」

秋になると、集落のお宮の周りには大きな幟(のぼり)が立ち、祭りの訪れを知らせます。祭りの日には大きくて美しい傘鉾(かさぼこ)(花笠(はながさ))を飾る地区、参道沿いの家が大きな提灯を下げる地区など様々ですが、皆一年に一度の大切な日を心待ちにしています。

夜になると、小さい子どもからお年寄りまで、銘々に毛布を抱えたり、弁当や酒を抱えたりしながら、お宮や公民館などへ続々と集まってきます。その表情は、これから始まる神楽への期待に満ちています。いよいよ時間が来ると、透き通るような笛の音が夜空に鳴り響き、太鼓の音が大地を震わせます。

粛々と舞う儀式舞に続いて、装飾豊かで豪華絢爛な神楽衣裳(かぐらいしょう)に身を包んだ神や鬼が舞殿に立ち現れる神楽舞が繰り広げられていき、子どもも大人も食い入るように見つめ、大きな拍手を送ります。夜気が深々と冷え込む中、人々の熱気とともに神楽の夜は更けていくのです。神の御前に集い、一年の豊作と平穏に感謝し、次の一年も平和に暮らせるよう祈りながら、一緒に祭りの日、神楽の宵を楽しむこと、それが人々にとってなによりの喜びなのです。

現在では、神社祭礼での奉納や地域のイベントでの上演にとどまらず、ホールの舞台で舞う機会が増え、照明効果や音響効果を取り入れた公演や、現代アーティストとコラボするなど、新たな「魅せる」挑戦をしています。

その一方で、昔ながらの舞を楽しもうという伝統を守るための取組も行われています。石見地域の神楽の持つ多様性、多面性、時代に寄り添う柔軟性も、人の心を惹きつける魅力です。

左:傘鉾が飾られた地域のお祭り/右:奉納神楽を楽しむ人々

地域を飛び出す石見神楽

江戸時代後期から明治期にかけて、広島県境や山口県境を中心に周辺地域にも影響を与えた石見神楽。全国にその名が知れ渡ったのは、1970年に大阪で行なわれた日本万国博覧会のメインステージにおける石見神楽の演目「大蛇(おろち)」の上演がきっかけでした。「大蛇」は八岐大蛇(やまたのおろち)神話を元にした演目で、それまで1頭から2頭の「大蛇」が出てくるのが一般的でしたが、大きなステージで魅せるため、はじめて8頭以上の「大蛇」に挑戦し、その迫力で観客を圧倒しました。これを機に多くの「大蛇」が出てくるようになり、県内外に知られるようになったほか、個々の神楽団体での活動だけではなく、神楽団体が連携して神楽公演を行う体制づくりができました。

現在では、そういった協力体制も定着し、国や他県から要望を受けて、個々の神楽団体や各市町の神楽連絡協議会単位での県外公演や海外公演も多く行われています。

1970年大阪万博での「大蛇」上演

神楽とともに発展してきた地場産業

石見神楽蛇胴の彩色風景

石見神楽面(いわみかぐらめん)、金糸・銀糸をふんだんに用いた豪奢な石見神楽衣裳(いわみかぐらいしょう)、演目「大蛇」に用いる石見神楽蛇胴(いわみかぐらじゃどう)。これらは、いずれも和紙が使われており、石見の地「浜田」で生まれ、発展してきました。

石見神楽面は、粘土型に和紙を何層も貼り重ね、柿渋を塗ることで補強され、軽さと汗に強い耐久性を実現しています。また、舞の中で、一際存在感を放つ龍や虎などの動物や植物などの神楽衣裳の模様も和紙を土台に刺繍されます。更に、約17mもある「大蛇」の蛇胴の躍動感あるリアルな動きを可能にしているのも、石州和紙(せきしゅうわし)の特性による所が大きいといえます。

石見神楽を語るうえで欠かすことのできない「面・衣裳・蛇胴」に共通する、なくてはならない材料、それが石州半紙(せきしゅうばんし)に代表される石見の和紙でした。この和紙なくして、石見神楽のものづくり産業は成立しえなかったのです。また、その技術は石見神楽にとどまらず中国地方の神楽に大きな衝撃と影響を与え、瞬く間に広まりました。

ひと言で「神楽」といってもその姿は地域によって様々です。出雲や備後など他の地域と接した土地では、双方で影響しあいながら奏楽や演目が成り立ちました。

また、山間部では、ゆるやかな奏楽と舞で人々の心を癒し、沿岸部では弾けるような奏楽に乗せた激しい舞で観る者の心を沸き立たせます。同じ信仰や流れを汲みながらも、それぞれの集落で、その土地の特徴ある舞が受け継がれてきました。

毎週土曜日開催の石見神楽定期公演

それぞれ個性はあれども、舞う場所が変われども、変わらないのは郷土を想う心、それがここ石見地域で伝承される「神楽」なのです。

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