江戸時代の情緒に触れる絞りの産地~藍染が風にゆれる町 有松~STORY #072

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江戸時代の情緒に触れる絞りの産地 ~藍染が風にゆれる町 有松~ 江戸時代の情緒に触れる絞りの産地 ~藍染が風にゆれる町 有松~
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ストーリーSTORY

どこまでも広がる藍色の空の下、藍で染められた絞り暖簾が風にゆれる古い商家の落ち着いた佇まい。
絞りの町「有松」には、江戸時代の浮世絵さながらの景観が今も静かに広がっています。

「ほしいもの 有松染めよ 人の身の あぶら絞りし 金にかえても」

この歌を詠んだ『東海道中膝栗毛』の主人公の弥次さんは、絞りの素晴らしさに魅せられて手拭いを買いました。
旅のお土産として、世界に知られている有松の絞りはいかがですか。
四百年の歴史を持つ有松の江戸文化は、今も多くの人々を魅了しています。

絞りの町「有松」へようこそ

有松の景観 有松の景観

名鉄名古屋駅から名鉄名古屋本線の電車に揺られて20分。有松駅の改札口を出ると、大きな案内看板が目に飛び込んで来ます。看板の矢印に従って歩くとすぐに無電柱化された東海道沿いの古い町並みに出会います。それが絞りの町「有松」です。どこまでも広がる藍色の空の下、藍で染められた絞り暖簾が風にゆれる古き商家の落ち着いた佇まい。江戸時代さながらの景観が今も静かに広がっています。

弥次さん喜多さんも楽しんだ有松での買い物

有松鳴海絞の商品 有松鳴海絞の商品

今から二百年ほど前に十返舎一九が書いた『東海道中膝栗毛』をご存じでしょうか。この本の主人公の弥次さん喜多さんは、お伊勢参りの徒歩旅行の途中に東海道を東から有松の町に入りましたが、電車で訪れる現代の観光客は有松駅から南へ歩いて入ります。有松で、弥次さんはお土産として東海道名物の絞りの手拭いを購入しました。二百年後の今も同じようにお土産を買う事が出来ます。
「絞り」は古代から伝わる染めの技法。布を縛って皺を寄せ、生地の幅を縮め固定した後に染色を行い、縛り糸を抜き取って完成です。いかに白地を残すかが大事だと言われています。工程は大きく分けて図案選定、型紙取り、下絵刷り、絞り加工(括り)、染色、糸抜き、仕上げの7つからなり、それぞれ分業で営まれ、有松周辺の多くの人が携わっていました。

有松は世界一絞り技法の多い絞り染めの産地として知られており、国の伝統的工芸品に指定されています。江戸時代には尾張藩の庇護のもと、将軍献上の高級品として珍重され、地域の繁栄を支えてきました。その後、明治維新により絞産業は一時衰退しましたが、様々な努力により復興し、明治時代から大正時代にかけて最盛期を迎えました。絞商の援助により鉄道の延伸と有松駅の設置、学校の開設が実現し、この地域は大いに発展しました。現在の有松は名古屋の重要な歴史観光資源となっています。

東海道から有松の町をぐるりと見回せば、伝統的なものから近代的なものまで様々な「絞り」に出会うことでしょう。着物、浴衣はもちろん、洋装品、アクセサリー、装飾品などの開発にも有松は力を注いでおり、様々なお店で販売されています。丸めると手のひらにすっぽり収まる絞りの洋服も評判です。ぜひ、その眼でお確かめ下さい。

有松でしか出来ない絞り体験に挑戦しよう

絞り体験 絞り体験

東海道を東に進んで行くと、有松・鳴海絞会館が右手に見えて来ます。ここは有松絞りの資料展示と販売も行っており、絞りについて詳しく学べます。伝統工芸士による絞りの実演も見学出来ます。有松の各所にある絞り工房では、ハンカチやスカーフなどの絞り体験も気軽に体験出来ます。弥次さん喜多さんが経験することが出来なかった絞り体験です。ぜひとも挑戦し「世界に一つだけの絞り」を素敵なお土産にして下さい。

有松の町並みを散策してみよう

歌川広重作『東海道五拾三次之内 鳴海 名物有松絞』 歌川広重作『東海道五拾三次之内 鳴海 名物有松絞』

絞り体験を満喫した後は、東海道約800mに沿って建ち並ぶ有松の町並み散策はいかがでしょう。この古い町並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている価値の高いものです。町並みに溶け込むように置かれた歌碑等とともに、その佇まいは見る者を魅了することでしょう。

何よりも素晴らしいのは、江戸時代の浮世絵にも描かれ、弥次さん喜多さんも眺めたその町並みが、そっくりそのまま残されていることです。
左側が歌川広重作『東海道五拾三次之内 鳴海 名物有松絞』、右側が現在の有松の町並みです。

とても雰囲気が似ていると思いませんか。この町並みは天明4(1784)年のほぼ全戸焼失した有松の大火からの復興によって形作られたものです。この時期に防火を考慮した総瓦葺・塗籠造の商家が建ち並ぶようになりました。有松の絞商を営む商家は他の地区と比べ間口が広く、太陽の日差しから藍染めの商品を守るために軒が低くなっているのが大きな特徴と言えます。大規模な建物には明かり取りの天窓もあります。実際に見て確認して下さい。

有松の伝統文化を満喫してみよう

山車 山車

今の有松には、弥次さん喜多さんの時代にはなかった魅力がたくさんあります。町中に精緻な技法の絞りが乱舞する6月の絞りまつり。笛や太鼓の音に乗って、山車3輌のからくり人形が躍る有松天満社の秋季大祭。ともに多くの観光客がやってくる人気の催しです。秋季大祭の夜祭りでは山車の提灯に灯がともり、とても幻想的です。
3輌の山車は、いずれも名古屋周辺の山車の特徴であるからくり人形を載せた山車で、絞産業で潤った町の繁栄の象徴として祭礼に登場するようになったものです。そのうちの1輌は有松山車会館に展示されています。有松の隆盛が偲ばれる素晴らしい山車です。ぜひご覧下さい。 町並み散策に疲れたら、商家を改装したカフェやレストランでゆったり時間を過ごす事も出来ます。宿泊をご希望でしたら商家改装のゲストハウスもあります。小さな驚きと新鮮な感動に出会う、そんな町が有松です。訪れた人々をおもてなしの心で歓迎してくれます。心ゆくまで有松を満喫して下さい。

現代に息づく有松の絞り文化

伝統工芸士の実演 伝統工芸士の実演

有松の町が四百年間、不断の努力で技術開発を続けたことで、世界中で愛される「絞り」となりました。絞りは今では百種類を超える技法の素晴らしさで「Shibori=Shaped resist dyeing(立体的に防染された染物)」と定義され世界共通語となりました。世界20ヵ国の関係者を集めた国際絞り会議の開催、ワールド絞りネットワークの設立など、有松は絞りの魅力を全世界に発信しています。また、有松は歴史的な町並みの保全に努力し、絞り産業、古い町並み、山車祭りといった歴史文化を活かし、繰り返し訪れてみたくなる魅力あるまちづくりに取り組んでいます。

弥次さん喜多さんが今の有松の様々な取り組みを見たら、きっと驚くことでしょう。
【江戸時代の情緒に触れる絞りの産地 関連情報サイト】

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